2009年12月

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本年最後の営業日になりました。
今年後半、ホームページをリニューアルしてからは、WEB上での商談が多くなり、遠方のお客様ともずいぶんお取引させていただきました。また修理、加工の依頼が途切れることなく、プロショップとして一定の役割が果たせたのではないかとおもっております。
リーマンショック以降の景気の落ち込み、デフレ時代の到来と、業界の周辺環境は依然厳しいですが、良いお客様に恵まれまして、あらたな年を迎えることが出来そうです。
心から感謝いたします。
来る年もより良い商品、より良いサービスを提供させていただけるよう努力を続けます。
それでは皆様、良いお年をお迎えください。
来年も宜しくお願い申し上げます。

*新年は2日から営業いたします。
フェイク
昨今、インディアンジュエリーが一般の方々の中にもずいぶん浸透してきた感があります。とりわけターコイズをあしらったものは人気がありますね。ネイティブ・インディアンを象徴する石であることは間違いありません。
そこで、このバックルをご紹介します。これは20年ほど前に、自分自身のために買い求めたものです。当時ビンテージウエアの買い付けで米西海岸を廻りましたが、南下してたまたま訪れたメキシコのシルバーディーラー(オーナーは白人)で一目惚れしたんです。地厚なスターリングシルバーの台座の上に、見事なエングレーブが施され、目の覚めるようなブルーの大きなターコイズが3個嵌め込まれています。
気に入って何年か使っていましたが、真ん中の石を留めているシルバーのトリミングがゆるんで、石がカタカタと音を立てるようになりました。石が落ちる前に直しておこうと思い、慎重にトリムを開いて一旦石を外しましたが、石の裏側を見ると、切断面が真っ白なのです。…(あれっ?)これ、染め物じゃないの!…色の褪めた石を染料で染め上げたフェイクなのです。台座のハンドメイドのシルバー細工の出来の良さに、自然石だと思い込んでいました。(このバックルは今でも自分のお気に入りのひとつですが)。
この20年前の話をひきあいに出したのは、現在ターコイズということで流通している石の多くが、天然のままではないということを知っておいていただきたいからです。20年前にして、現地でも手を加えたものが流通していたのですから、現在も推して知るべしです。大多数は色を注したもの、または練り物とよばれる天然石を砕いて粉末にして樹脂で成型したものです。そもそもターコイズは割れ易く、非常に加工しにくい素材です。ジュエリーとして用いる場合の強度や見栄えを考えて、あるいはコストを抑えるため、さまざまな加工がなされるのは当然と言えば当然です。かならずしも消費者を欺く意図がある訳ではありません。
しかし当店では誤解を避けるため、インポーターのお墨付きがあるものに限り天然石と表記させていただき、それ以外の確認が出来ないものについてはすべて加工品(の可能性有り)として販売させていただいております。

*年内は31日まで通常営業です(火曜定休)。新年は2日から営業いたします。
年内最後?パッチ縫い付け
WEBでフライトジャケット関係のサービスをご紹介するようになってから、遠方からもたくさん問い合わせをいただいています。今日は神奈川県の方からご依頼いただいてD-1とA-2にそれぞれレザーパッチを縫い付けます。
宅急便で当方宛に送っていただきましたが、年末は荷物の着荷が大幅に遅れるのが通例で、午後8時の閉店時間に間に合わないことさえあるのです。しかし今日はなぜか平素より速く配送されました。担当ドライバーの方が優秀なのでしょうか?…それもあるかもしれませんが、やはり不況のため、デリバリーされる荷物自体が年末にしては少なくなっているのだとおもいます。
平成大不況は来年もまだ続くのでしょうが、当店は変わらない(今さら変えようがないけど)スタンスで、地道に営業を続けていきます。

*年内は31日まで通常営業です(火曜定休)。新年は2日から営業いたします。
ライダースウォレットのクリーニング&メンテナンス(補足)
昨日の日記の補足です。
レザー製品に適度なメンテナンスは必要ですが、購入直後にレザーオイルをベッタリ塗るのはあまり意味がありません。むしろ革の表面に開いたピンホールを塞いでしまい、通気性が無くなってしまうという弊害があります。湿気が溜まり易くなり、カビの原因になったりもします。
とくにタン色のハンドバスケットやカービングの工程は、
革に水を打って刻印→乾いたら全体にニートラックというラッカーを塗布(凸面保護のため)→凹面に色を入れるためペースト状の塗料を全体にすりこむ→すぐに拭き取り→凸面は塗料が拭き取られ、凹面だけに色が残る→仕上げ剤を塗って凹面の塗料を定着させるとともに全体をコーティング→陰影のあるクラフト完成
という手順で、仕上がり時点で表面は2回コーティングされていることになります。この状態でさらに上からバターのようにミンクオイルなど塗っても意味無いのです。凹面にオイルのロウ質が残って白くなることもあります。
ということで、新品購入後、半年以上はそのまま使っていただけると思います。
メンテナンスが必要な段階になっても、出来るだけ薄く伸ばして一定の脂質を加えてやる程度で十分です。当店では、メンテナンス用には伸びが良く塗り易いコロニル社のものをおすすめしています。
ライダースウォレットのクリーニング&メンテナンス
昨日下取りさせていただいたFUNNYのバスケット・ウォレットのクリーニング&メンテナンスをしています(当店は衣類商として古物営業・買い取りの許可をもっています)。
かわりにお客さまには熟考の上、最高クラスのウォレットをお買い上げいただきました。
さて、かなり使い込まれたこのウォレット、当店のメニューにしたがって細部まで一通り手を入れます。まずネジ留めされているコンチョ、ドロップハンドルを外します。この段階でネジ、スナップのキャップ、ナスカンが傷んでいれば組付けのときに新品交換しますが、今回は交換不要でした。シルバーのコンチョは小キズが目立つのでバフがけすることにします。本体は、内側ポケットの裏面の仕上げの糊が剥がれて毛羽立っていますので、あらためてヘラでペースト状の糊を打って、ガラス片で磨きこみます。キーホルダーも同様に裏面を仕上げ直します。表面のバスケット彫りの部分は、まずBALMで汚れ落しをしますが、バスケットの場合は凹面がありますので、歯ブラシを使用します(色焼けと、デニムの色が移っている部分は元にはもどりません)。その後、全体にコンディショナーを塗って仕上げます(革が枯れかかっている場合はフットオイルを使用しています)。
リフレッシュされ、程よく使い込まれた革の味わいが出て、とても良い雰囲気です。
FUNNYの製品は元々のつくりが良いですから定期的なメンテナンスで長くお使い頂けます。
本日の修理品
今回はバズのN-1です。先回同様、ジッパーのスライダー故障です。これは昨年販売させていただいたものですが、ワンシーズン着用しただけでジッパーの開閉が出来なくなりました。このN-1に付いているコンマティックの真鍮ジッパーはMADE IN USAですが、最も故障が多いのではないでしょうか。(N-1の販売数が多いこともありますが)。販売時にすべて動作確認をしていますが、新品の時点でも多少動きにバラツキがあり、精度が高いとは言えません。故障の大半は、スライダーが変形してムシを噛み合すことが出来なくなっているので、大きな変形でなければラジオペンチで修正も可能です。今回は大きく変形していて、クラックになっているようでしたので、メーカー対応にて部品交換させていただきました。

*年内は31日まで通常営業です。新年は2日から営業いたします。
本日の修理品
2001年頃まで生産していたシュガーケーンの3RDモデルです。当時はラインナップにノンウォッシュ(20790円)しかなく、レア生地からはき込んでいただいたものですが、素晴らしいタテ落ち感です。このモデルは現行のスタンダードモデル生産開始とともにフェードアウトしましたが、力織機で織ったゴリゴリした触感が非常に良かったと思います。旧式の力織機は生産効率が非常に悪く、生地幅がわずか70センチほどで、織れる長さも一台の織機で一日2反(100メートル)程度ということで、国内では主に岡山県で生産されています。糸のテンションがきちんと引き揃わなかったり、ネップ(糸のかたまり)があったりしますが、それがデニム本来の味わいとなり、非常に魅力があります。一方現在主流の高速織機は生地幅もW(148センチ)があたりまえですので、生産性が全く違いますね。シュガーケーンのジーンズはラインナップも多くなりましたが、いまだに力織機にこだわったアナログ生産を続けています。
さて、このジーンズは以前に股ぐりと膝とポケットの修理をしていますが、今回は前立て横の穴開きを塞ぎ、崩れてしまったボタンホールを修復しました。これでまたしばらくははいていただけるのではないかと思います。
本日の修理品
ずいぶん昔に、当店で販売したマニフォールドさんの極厚ギャリソンベルトのサイズつめが入りました。イレギュラーサイズ(40インチ)でつくらせていただきましたが、オーナーがずいぶんお痩せになったので、一番奥の穴でも間に合いません。穴を奥に開け足すのは簡単ですが、ベルト端が長くなるとバランスが悪く、子供っぽい感じになってしまうので、ここはスッキリとバックル側でカットします。カットした折り代は、NIPPI社の革漉き機で半分ぐらいの厚みに漉いてしまいます。
この革漉き機、メチャ重い上に場所をとるので普段は邪魔でしょうがないのですが、こういうときには俄然力を発揮します。6ミリの厚革をあっという間に半分の厚みに漉き落としてくれます。漉き刃を研いだり、細かなメンテナンスも必要ですが、当店の業務には欠かせないツールの一つです。鋳物のボディも、古いミシン同様、造形的に非常に美しいのです。
折り返し部分を漉いたら、必要な穴をポンチで開けて、修理完了です。
本日の修理品
バズのL-2Bのフロントジッパーのスライダーが破損し、メーカー対応にて新品交換させていただきました。このアルミダイキャストのクラウンジッパーは比較的故障の少ないものですが、やはり現代のYKKジッパーのような訳にはいきません。日本が世界に誇るYKK(吉田工業株式会社)にシェアを奪われ、消滅したメーカーだけに、リプロ生産したものには当然それなりの弱点があります。しかし忠実な復刻品には欠かせないディテールの一つです。今回は、ムシやテープは全く傷んでおらず、スライダー(引き手)の変形が原因でジッパーが閉じられなくなっていました。パーツがあれば店頭でも対応出来たのですが、近年メーカーのパーツ管理が厳しく、パーツ交換の場合はすべてメーカー対応になっていますので、わざわざ本体ごと発送して修理させました。杓子定規な対応に少々うんざりしますが、メーカーの立場とすれば部品管理に神経質になるのも理解出来なくはありません。他社製品に流用されたり、偽モノ製造に利用される可能性も無くはないとおもいます。
この製品は初期のM品番で、お買い上げいただいたのは10年以上前ですが、着用頻度も多くなく、通常使用での故障ということで、当店では無料で対応させていただきました。
こんなのはいかがでしょうか?
思い入れのあるジーンズを、リメイクしてバッグにしたいという女性オーナーのご要望があり、製作いたしました。(カスタマーサービスに画像をUPしました)。
レディースもののジーンズは生地が薄く、特に本品のように塩素系の漂白加工がなされているものは、値段にかかわらず、数年で生地がダメになってしまいます。そもそも長く着用することを前提につくられてはいません。後ろヨークの刺繍部分にブランドネームが入っているので、ポケットの袋布になるように裁断しました。(フラップを開けないと見えませんけど…)。
レザーのハンドル部分は風合いの良いタンニンなめしのものをチョイスし、フラップはシュリンクレザー(縮み加工革)をつかってみました。端は切りっぱなしのままで荒々しい感じを残し、止めには鹿ヒモと鹿の角を輪切りにしたコンチョを使ってあります。
おまかせでつくらせていただいているうちにウエスタンテイストになってしまいましたが、デニム・リメイクの一例としてご紹介しました。
ひきつづき、パッチ縫い付け
今週はこれで6着目になるでしょうか?今日はバズの新作MA-1、60年代のオレンジ裏のレプリカです。ネームと腕章、画像のタクティカル・エア・コマンドのパッチを縫い付けました。コマンドのパッチは米軍放出の実物ですが、お手頃価格の800円です。機械刺繍ですが、現代モノのようにシャキッとしておらず、ヨレヨレしていて良い雰囲気があります。実物のMA-1やL−2B、N-2Bなどによく付けられていますね。同じデザインで緑と黒だけで刺繍されたものもありますが、そちらは実戦配備のジャケットに付けるらしいです。ほかにも数種類ストックがあります。(ジャケットとの同時販売のみとさせていただきます)。
時節柄、ジャケットがらみの話題が多いですが、他のアイテムにも同様に力を入れていますので、よろしくおねがいします。
パッチ縫い付け
BUZZのB-10(赤リブ)に、手刺繍のパッチを縫い付けています。刺繍パッチにも様々なものがあり、一般に流通しているもののほとんどは、コンピューター制御の自動ミシンによる機械刺繍です。大量生産が出来、安価で、刺繍面は非常にきれいにそろっています。しかし表面が平滑できちんとそろいすぎ、味わいがありません。それからスカジャンなどに用いられる横振りミシンによる刺繍があり、職人さんの手作業になるために、これを手刺繍と表現することもあります。
本品はそのどちらでもなく、ミシンを使わずに、フェルト地に手針と刺繍糸だけで柄を入れていく、非常に手間のかかるものです。イギリスでフライトジャケットのレプリカを生産しているイーストマン社の10年以上前の製品ですが、実際の生産はパキスタンあたりではないでしょうか。先進国でこんな手間のかかるのをつくってたらメチャクチャに高くなってしまいます。ちなみに当店の店頭価格は8000円です。陸軍航空隊用があと10枚ほど、海軍用があと2枚あります。今後取り扱いの予定もありませんので、H,P上ではご紹介はしていませんが、店頭ではご覧いただけます。
フライトジャケット本体をお買い上げの場合は縫い付けは無料です。
本日の修理品
初期の頃のドゥニームのXXです。フロントのボタンホールがくずれて、ボタンが掛からない状態です。このタイプでは比較的多いケースです。これは、オリジナルにこだわるあまり、ボタンホールの芯糸、かがり糸とも100%の綿糸を使っているため、何年も着用しているとある程度起こりうることなのです。けして手を抜いてつくっているわけではありません。むしろ風合い重視で綿100%の糸を使用すればコストが上がります。しかし丈夫さの点では一般的なポリエステルの糸には全くかないません。
この商品特性を理解していただかないと、『値段が高いのにすぐにほつれたじゃねーか!』ということになってしまいますが。オリジナル重視のリプロ品では、オリジナルが持っている不具合も、そのまま受け継がれてしまいます。
修理は比較的簡単ですので、ご相談ください。
本日の修理品
広幅の巻き伏せ縫いによる裾上げです。仕上がり線から3,5センチ入ったところにシングルミシンでステッチが入ります。今回はデニムのカーペンターパンツですが、チノパンツなどはほとんどこの仕上げをします。折り幅が大きい場合、テーパーのきつい(先細りの)パンツでは織り上げてステッチが入る位置で横幅が足らないこともあり、脇の縫い代を開いて調整することもあります。このパンツは中古加工されていますので、違和感のないように最後に裾線をシェービングして荒らしておきます。
パッチ縫い付け
今日は犬山市のお客様からお預かりしたジャケットに刺繍パッチを縫い付けています。3着のフライングジャケットに、合わせて20枚ものパッチを付けます。地味なフライングジャケットも、フルデコレーションで全く違ったイメージになりますね。
コバいっぱいまで刺繍の入っているパッチは、縫い付けの際にミシン針で刺繍糸を切ってしまう恐れがあるため、出来るだけ細い針を使用します。
良書であるため、ご紹介
『環境保護運動はどこが間違っているのか?』槌田敦著 宝島社
地球環境問題を解決するためにやらなければいけないと当たり前のように言われている事の中に、いかに多くの嘘や誤解が含まれているかを本書は指摘します。
昨今の、猫も杓子ものエコブームは一体どこまでいくのでしょうか?
エコエコエコエコエコエコと、エコ意識無くば人にあらずの様なエコファッショがまかり通っています。
政府の経済対策としての自動車や家電のみならず、全く関連のない業種までがエコをネタに商売していたりします。当店の店頭にも再生デニムのエコジーンズでも置いた方がいいのかと思ってしまいます。(置きませんけど)
本書は10年ほどまえに上梓されたものですが、再読してみて、あらためて科学者の視点からの鋭い指摘には目から鱗〜の思いです。
本日の修理品
ケーシーズの45ミリ幅のギャリソンベルトに、38ミリ用のクラムライン社のバックルを取付けました。(カスタマーサービスに画像UPしました)。本格的なウエスタンのバックルは、多くが38ミリ(1,5インチ)幅対応で、幅広のベルトではポン付け出来ません。バックル側を加工する場合もありますが、この美しいクラム社のバックルは鋳物ですからロウ付けなども出来ません。そこでベルトのネック部分とホール部分の上下のコバを大胆にカットしてバックルのトンネルに収まるようにしました。カット面とステッチの端も始末してあります。この後、女性オーナーのご希望で、大小のスタッズをスキップ状に打ち込みます。上品で高級感のある、一点ものに仕上げます。
本日の修理品
ネルシャツの着丈を少し短くしたいとのご要望で、裾線を5センチほどカットしました。裾を外に出したシャツの上にハーフ丈のジャケットを着た場合、あまりシャツの丈が長いとバランスが悪いです。この修理も、時々リクエストをいただいています。裾のスカラップの形状により、ジーンズの裾上げと同じように三つ巻きするか、ロック始末して二つ折りにしてコバステッチを入れます。今回は地厚なネル地でしたので、スッキリおさめる為にロック処理しました。プレスしていませんがよじれも無く、きれいにラインも出ています。
本日の修理品
同じ方がまとめてお持ちになった80年代以降の505/517です。カリフォルニアで生産していた頃でしょうか?生地は防縮加工されたものを使っています。縫製もすべてポリエステル糸で、裾上げもチェーンステッチなど使っていません。丈つめをしますが、カット分が2,5センチほどなので、三つ巻き分の縫い代を確保するために、一度裾線をバラしてプレスで伸ばした後にカットします。オリジナル通りにポリ糸を使ってシングルミシンで裾上げします。
ところで、ビンテージジーンズのブームとともに注目されたチェーンステッチによる裾上げですが、誤解をされている方も多いと思うので少し触れておきます。
まず、チェーンステッチ(環縫い)はシングルステッチに比べて強度の点で劣ります。環縫いはセメント袋の口をふさぐのに用いられていますが、セメントを使うときに、一カ所に切れ目を入れれば、そのまま縫いはじめの方向にツルツルと抜けていきます。あれと同じことです。けして丈夫なものではありません。着用に伴って一カ所糸切れをおこすと、そのままバラバラと糸が抜ける事がよくあります。学生時代にリーバイ・ジャパンでアルバイトをしていましたが、裾をカットする習慣の無い欧米で、チェーンの裾線のほつれがクレームの嵐となって、シングルミシンに変更になったと聞きました。真偽のほどは定かではありませんが、ありえる事だと思います。
それから、チェーンで綿糸を使って裾上げすると、その後に糸が縮んでアタリが出ると信じている人もいますが、ありえません。裾のアタリは、チェーンとも糸の材質とも関係なく、機械に挟み込むときのアタッチメント(ラッパ)の形状によって、三つ折り部分が直角に折り込まれず、微妙に斜めによじれることでおこります。独特の味わいがありますが、これも一種の縫製不良と言えなくもありません。
当店では、とくにご要望が無ければオリジナルのディテールに準じた加工をしていますが、お客さまのお好みで仕様変更も可能です。
シェリダン・カービング
最近のレザー製品のブームで、革ザイフや携帯ケースを自作する人がずいぶん多くなりました。中にはツールを一通り揃えて、カービングに挑戦する方もいらっしゃいます。カービングには様々な手法がありますが、ネイティブ系のイメージにぴったり合うのはシェリダンスタイルのカービングです。発祥がワイオミング州のシェリダンのためこの呼び名らしいのですが、大雑把に言うと、花柄を中心に茎や葉が規則的に渦を巻くパターンです。FUNNYのカービング製品はすべてこのスタイルですね。もちろん職人さんによって、ディテールにはかなりの違いが出ます。スタンプツールは鋼材を削って自作したものも多いのです。また、同じ人が同じ素材に彫る場合でもトレース無しのフリーハンドですから、全く同じものはありません。それも大きな魅力です。
私はカービングは本職ではありませんが、自分で使うものは出来るだけ自作するようにしています。画像は2,3年前に作ってSHOPで使っているトレーです。革は西尾市のクラフトマン・永谷氏のご提供です。質の良い革を使えば打刻面がはっきり出て、凹面のもどりもありません。時間が取れたら、大きなものも作ってみたいと思っています。