本日の修理品

本日の修理品
同じ方がまとめてお持ちになった80年代以降の505/517です。カリフォルニアで生産していた頃でしょうか?生地は防縮加工されたものを使っています。縫製もすべてポリエステル糸で、裾上げもチェーンステッチなど使っていません。丈つめをしますが、カット分が2,5センチほどなので、三つ巻き分の縫い代を確保するために、一度裾線をバラしてプレスで伸ばした後にカットします。オリジナル通りにポリ糸を使ってシングルミシンで裾上げします。
ところで、ビンテージジーンズのブームとともに注目されたチェーンステッチによる裾上げですが、誤解をされている方も多いと思うので少し触れておきます。
まず、チェーンステッチ(環縫い)はシングルステッチに比べて強度の点で劣ります。環縫いはセメント袋の口をふさぐのに用いられていますが、セメントを使うときに、一カ所に切れ目を入れれば、そのまま縫いはじめの方向にツルツルと抜けていきます。あれと同じことです。けして丈夫なものではありません。着用に伴って一カ所糸切れをおこすと、そのままバラバラと糸が抜ける事がよくあります。学生時代にリーバイ・ジャパンでアルバイトをしていましたが、裾をカットする習慣の無い欧米で、チェーンの裾線のほつれがクレームの嵐となって、シングルミシンに変更になったと聞きました。真偽のほどは定かではありませんが、ありえる事だと思います。
それから、チェーンで綿糸を使って裾上げすると、その後に糸が縮んでアタリが出ると信じている人もいますが、ありえません。裾のアタリは、チェーンとも糸の材質とも関係なく、機械に挟み込むときのアタッチメント(ラッパ)の形状によって、三つ折り部分が直角に折り込まれず、微妙に斜めによじれることでおこります。独特の味わいがありますが、これも一種の縫製不良と言えなくもありません。
当店では、とくにご要望が無ければオリジナルのディテールに準じた加工をしていますが、お客さまのお好みで仕様変更も可能です。