店長日記

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スタッズベルト製作中
当店では一昨年からオリジナルアイテムとして、スタッズベルトを製作しています。
帯はしっかりと腰のあるタンニンなめしのステアハイドを使用し、バックルも真鍮のキャスト製のもので、あえてクリア処理をしていません。一般に真鍮製のバックルは、鍍金を施すか、真鍮の上にクリア塗装を施します。これは真鍮が銅と亜鉛の合金であるために、銅と革のタンニンが反応して変色するのを防ぐためです。商品として店頭展開する上でも、変色しやすいのでは売りにくいという感覚もあったとおもいます。しかし、鈍く変色した無垢モノには独特の味わいがあり、ピカピカ、キラキラしたバックルよりも、日本人の感性にはピッタリくるのではないでしょうか?
スタッズも真鍮製で二本爪(ツープロング)と呼ばれるもので、こちらはスタンダード・リベット社のものを使っています。この二本爪の打ち込みには非常に手間がかかり、二の字に開けた穴に鋲を差し込み、裏のツメを折り込んで上からプレスします。国内では専用の工具が流通しておらず、ジグを金型屋さんにたのんでつくってもらいました。打ち込みのパターンはフローラルとアローヘッドの2種で展開しています。フローラルパターンの方は後ろ中心部分にスペースがあり、スタッズでイニシャルを入れることも出来ます(別途1000〜2000円)。
ただいま年末年始に販売して欠品したサイズを製作しております。
本日の修理品
強靭なブラウンダックのワークパンツの裾上げです。
ダック生地は太い糸で織られた平織り生地のことで、キャンバス、帆布(ハンプ)とほぼ同じ意味です。キャンバスはその名の通り、表面に白い顔料を塗って油絵を描くのに用いられますし、帆布はヨットの帆の素材として用いられたことからその名があります。
裾上げはオリジナルに準じてシングルミシンでおこないますが、ワークパンツの裾の巻き幅はやや太く、1,2センチくらいでとります。シームは両側とも3本針で巻き伏せられており、非常に曲げにくいので、プライヤーで挟んで処理します。お店によっては、シームの部分を木槌でバンバンたたいて折り込んでいるところもありますね。
このくらいの生地は工業用の地縫いミシンでならサクサク縫えます。
余談になりますが、ミシンの仕様を大雑把に分けると、工業用、職業用、家庭用ということになるとおもいます。
工業用は、単一機能で工場で一日中ぶっ通しで踏み続けて使うことを前提につくられていますから、頑丈なのは言うまでもありません。重い鋳物のボディで、モーターも大きなものが別体で取付けられます。
職業用は、手内職のプロの方達が使うポータブルタイプのミシンです。こちらは基本構造は工業用と変わりませんが、モーター内蔵型で、ボディはプラスチックを多用しているので、持ち運び可能です。耐久性は工業用には及びませんし、動力が弱いので厚物縫いも限度がありますが、故障も少なく、メンテナンスをちゃんとすれば20年以上は充分使えます。懇意にしているミシン屋さんによると、趣味で古布の縫い物をしているおばちゃんたちにも人気があり、中古の出物などがあるとすぐに売れていくそうです。
家庭用は、オモチャに毛が生えたようなもので、私は使い捨てミシンと呼んでいます。以前、作動しなくなったのを預かって修理しようとバラしたことがあるのですが、最も負荷のかかるギヤ周辺のパーツにプラスチックがコーティングしてあるのを見て、こりゃダメだと思いました。マンション等で使うことを考慮して、音が出ないように対策してあるのでしょうが、これでは抵抗の大きな生地など縫えるはずありません。内部パーツのプラスチックが経年劣化してひび割れたのが故障原因でしたが、そのパーツもメーカーの方では欠品しており、年数が経ち型替わりしているので対応出来ないとあっさり言われました。その時点でミシンではなく粗大ゴミになりました。よくTVショッピングなどで、使いもしない余分な機能満載で、『こんなに厚い生地の重ね縫いも楽楽〜♪』などとやっていますが、ウソつけ!と思いながら観ています。非力なモーターが焼き付きそうになっているんじゃないでしょうか?
宣伝に乗せられて買ったら後悔すること請け合いです。
本日の修理品
引き続きデニムの修理です。
現代的なジーンズは、内側の接ぎ目(インサイドシーム)を二本針巻き伏せという縫い代を巻き込むダブルステッチで処理するのが一般的ですが、ビンテージ(及びレプリカ)ジーンズでは地縫いした縫い代を片倒ししてコバステッチという仕様になります。そのため股ぐり部分では、ほつれや引っ張りに対する強度が劣るので、どうしてもパンクし易くなります。完全に裂けてしまう前の段階で手を加えてやりましょう。
裂け目の裏に当て布してかけつぎ→上から綿のテープで前後の身頃をつなぐとともに縫い代をカバー→完了
この修理は、名古屋市で婦人服を展開する◯ーノ・ピュ◯の店長氏からの依頼です。
東洋製品のファンでもあり当店のお客様としてもご愛顧いただいております。ご来店になるたび、昨今の業界事情や信用情報などを交換したりしています。
彼のお店は商業施設のインショップのために営業時間が長く、スタッフを集めてシフトを組むのに大変な苦労をしていたようですが、このところの不況で、人材募集をかけると希望者がどっと押し寄せるそうです。
平成大不況も人材を求める側には有利にはたらきますね。
B-15CとMA-1
今日は女性オーナーのご希望で、B-15C(モディファイド)のオリーブグリーンに当店で製作したパッチを縫い付けました。第8空軍の8にドラゴンが絡んでいる、ローカルメイドのパッチを元に製作しました。ちょっとなごみ系です。
ところで、B-15C(MOD)と、後継のMA-1(その間にB-15Dもありますが)の大きな違いは色(B-15C/オリーブまたはネイビー MA-1/セージグリーン)とジッパー等の付属関係ですが、縫製の仕様にも大きな違いがあります。両方をお持ちの方はおわかりでしょうが、着用感が全く違います。両方共に中綿にウールパイルが入りますが、B-15Cでは袖口と裾線をとじるとき、表地と裏地でリブで挟み込みますが、中綿は縫い込まずに浮いた状態(ふらし)で始末します。それに対してMA-1では中綿も同時に縫い込みます。これによって縫い代部分が張り出してガッチリしたフォルムになります。MA-1の方がしゃちこばった感じになるのはこのためです。この方が戦闘服らしいといえばらしいのですが、街着としてさらりと着るにはB-15系の方がなじみやすいかもしれません。このへんは好みが分かれるところですね。
本日の修理品
今週はデニム修理を集中的にやっております。
画像はヒップ周辺の生地が薄くなり、パンク寸前だったものを裏打ちしました。左右のヒップから股ぐりにかけては曲面なので、左右別々に当て布をします。今回は薄手のデニム生地を当て布に使いました。一般にジーンズの修理には接着芯地(シャツの衿の成型等に使われます)を用いますが、当店では小さな穴をふさぐ時以外はあまり使いません。接着芯地は、ガーゼのような生地に熱で溶ける樹脂をのせたもので、アイロンで圧着出来ます。お手軽ですが、デニムの表面に樹脂を浸透させることになるので、広範囲になると生地の風合いを損なってしまいます。大きな面積をカバーするときにはやはり当て布をして地の目(生地の方向)にそってたたいていく方が良いと思います。また、タタキもあまり細か過ぎると生地の縦糸を切ってしまうので、ある程度間隔をもたせています。

デニム製品のリペアについて、電話やメールで料金、納期等お問い合わせをいただくことがありますが、以下の点をあらかじめご了承ください。

*料金について
修理品の状態は千差万別ですので、正確な金額は店頭で見積もってみないとわかりません。目安としては、カケツギで裏打ちする場合は一カ所2500円以上になります。小さな穴でも生地が薄くなっている場合は、お客様の想像以上の範囲を裏打ちするケースが多いです。

*納期について
可能な限り迅速、丁寧を心がけておりますが、人手もスペースも限られた中で対応しておりますので、いつでもすぐに対応出来るわけではありません。また、たて込んでいる時期には、当然ながら自店で販売した商品を優先的に扱います。

*リペアをお受け出来ないケース
洗濯されていない製品の汚れ、ほこりは機械の故障原因となりますので、洗い上がりの状態以外はお受けしかねます。
本日の修理品
年末、年始にお預かりしたデニムの修理をせっせとやっているところですが、リブの補修依頼が入りましたのでご紹介します。
画像ではわかりにくいかもしれませんが、リブの中程に虫食いによるポチ穴が開いています。直径3ミリほどで、このくらいならば簡易修理で充分カバー出来ます。作業としては、粉末の樹脂を穴に落とし込み、熱を加えて溶かして固めてしまうというやりかたです。袖口を解体する必要も無いので、時間もかかりません。ニットパーツは小さな穴でもそのまま着用していると大きく広がってしまい、補修が難しくなります。以前にも書きましたが、リブの丸ごと交換は、中表にするために袖口だけではなく身頃までバラさなければならず、恐ろしく手間とお金がかかります。
穴が開いたら早く手を入れるにこしたことはないのです。

ところで日本には、高価な着物やジャケットの穴あきを補修する、専門職の人たちがいます。メーカー時代に、そのワザを目のあたりにしましたが驚くべきものでした。直径1センチほどの大きな穴を、その服の別の部分(縫い代や見返し端)から取った生地をほぐした繊維で、一本一本拡大鏡を見ながらピンセットでかけついでいくのです。仕上がりは完璧で、穴の痕跡すらありません。日本の職人技術の素晴らしさにすっかりヤラれました。
しかし、こういう人たちがヨーロッパのマエストロのように高く評価されないと技術は伝承されないでしょうね。現状では専門職は減っていく一方です。
キャスケット
キャスケットが昨年あたりからぽつぽつと売れています。
ハンチングに似ていますが横にふくらみを持たせたような形状になっています。当店ではニューヨークハット社のフェルト製のものを地味に展開しています(H.Pには載せていませんけどね)。春からはSUGAR CANEのキャスケットもラインナップに加わります。
キャスケットはなかなか使い勝手が良く、いろいろな服とコーデュネートできるアイテムです。
画像は2004年に当店でサンプル製作したデニム製のキャスケットです。商品化するつもりで気合いを入れて型紙から製作しましたが、日々、他の仕事に追いまくられて未だに現物化していません。
このときは、裾上げ等で大量に廃棄していたデニムの切れ端をなんとか利用出来ないかと考えたことと、懇意にしているミシン屋さんから横振りミシンの出物を紹介され、使う当てもないのに発作的に購入してしまい、それじゃ帽子でもつくろうかと考えたのです。
トップは8枚接ぎになっており、力織機で織られた高級デニム(切れ端ですけど)をぜいたくに使って、横振りミシンで接ぎ合わせております。腰裏と、ツバの芯地には本革を使用しました。フォルムも美しく、商材としては充分ですが、今期も作業時間がとれそうにありません。
ということで、こちらは話のネタとしてご紹介してみました。
早一週間
年が明けて、早一週間経ってしまいました。
私達物販業者はサラリーマンの方々のように年始にまったり過ごせる時間はありませんが、それにしても時間の経過が早く感じられます。一説によると、年を取るごとに時間経過に対する感覚が加速度的に早くなるそうです。10代より20代、20代より30代、30代より40代といったように…
はっと気づいたら老境にさしかかっているかもしれません。
ルーティンワークに埋もれること無く、日々感性を磨いていきたいものです。
昨日は東京から東洋エンタープライズの旧知の担当者二名が来店しました。
当店の取り扱いブランドの多くは、ここからリリースされます。旗艦ブランドのシュガーケーン、バズリクソンズ、サンサーフ、インディアン等はもちろん、今年はとくにロンウルフのブーツに力を入れていきます。海外ブランドの上を行く上質なつくりと履きやすさで、ブーツに一家言持つ人たちからも高い評価をいただいています。オーダーから仕上がりまで半年以上かかるのですが、出来るだけ現物販売出来るよう店頭のストックを充実させていきます。
さて、今日は昨年末にオーダーいただいた仕事にかかっています。イーストマン社のパッチをレザーでトリミングしてA-2に縫い付けます。
良書であるため、ご紹介
『昭和激流・四元義隆の生涯』金子淳一著 新潮社
本書は血盟団事件の首謀者であり、戦後政界の黒幕として絶大な影響力を誇った四元義隆氏の生涯を記したものです。
東大在学中に右翼のテロリストとして一人一殺を唱え、殺人罪で下獄、小菅刑務所で8年あまり服役した四元氏は、太平洋戦争直前に出所します。近衛首相を補佐し、陸軍の暴走に対抗しますが戦端はひらかれ、敗戦。日本再興のため文字通り身体を張って東奔西走する氏の生涯は、壮大なドラマそのものです。本書には氏と関わりのあった著名人がたくさん登場しますが、そうした人々の横顔、裏面も垣間みることが出来ます。
読了したあとに感じる爽やかさは、四元氏の徹底して無私な求道者としての姿勢、捨て石を覚悟した憂国の志によるのでしょう。
歴代総理の指南役、右翼の大立て者といわれる男の生涯は感動に満ちています。
ニットとカット・ソー
同じコットン素材のスウェットにも、大きく分けてニット(編み物)とカット・ソー(裁断・縫製物)があるのをご存知でしょうか?
ニットというとウール製品を想像しがちですが、素材とは関係なく、編み物一般を指します。一方カット&ソーは、編み地を型紙裁断(カット)し、縫製(ソーイング)することからこの呼び名があります。これは基本的に生地製品と同じ工程で生産されます。製品としては一見すると同じようですが、製造工程が大きく違い、商品特性も違います。簡単な判別法としては、ニットはボディの脇に接ぎ目がありません。これは丸胴といって、編み機でボディを筒状に編み立てていくのです(ただし袖やリブは裁断して縫い付け)。生産性の点ではカット・ソーにかないませんので、短サイクルで生産するレディース製品や比較的低価格の製品はカット・ソーが主流になります。
そしてニット製品には、現代の編み機で製品化したものと、半世紀前の吊り編み機(機械が柱に吊られた状態で固定されている)を再稼働させ、手編みに近い風合いにこだわったものがあります。画像のフェローズ製品は40〜60年代当時の吊り編み機でゆっくり編み上げられたものです。手編み感覚のざっくりした風合い・毛羽立ち・フィット感などは現代のものとはあきらかに違います。
生産性が低い(高コスト)のは力織機で織ったデニムと同様ですが、やはりこちらのほうが長い期間、気持ち良く着ていただけると思います。
バックとベリー
爬虫類素材として最高級とされる鰐革ですが、カットする部位によってかなり表情が違います。バックカット(背中をカットし、腹の部分を使用)では表面に凹凸が無く、鱗模様が揃って落ち着いた感じになります。ベリーカット(背ワニと呼ばれ、腹の部分を裂き、背中の突起部分を使用)ではゴツゴツした迫力のある製品に仕上がります。画像は希少なナイルクロコダイルをベリーカットで使用したFUNNYのウォレットです。背中の突起部分(クラウンといいます)を贅沢に使用するので、バックカットよりも割高ですが、迫力満点です。
クロコダイルはワシントン条約の規制対象ですので、個人で製品(または革材料)の輸入は出来ません。経済産業省に毎年申請をして輸入枠をもらい、その範囲で業者が輸入をしています。他にもニシキヘビやオーストリッチ(ダチョウ)も規制対象になっています。
新年早々のこの時期、小売業界ではお約束のように福袋を集客ネタにしています。このモノ剰りの時代に、多くの商品をつめこんだ袋詰めのセット商品が、どれだけ購買意欲をそそるのかわかりませんが、量販さんなどは12月初旬から準備作業しています。もはや売り上げ予定として予算が組まれ、年間スケジュールの一部になっています。実態としては余剰品をまとめ売りするのではなく、一部の余剰品とセール用に開発した商品の抱き合わせ販売といったところでしょうか。
実はアパレル業界には、セール品を専門に開発する業者さんがいます。そして度々問題になるのですが、その多くの商材が二重価格で販売されています。
二重価格というのは、正札10000円→セール価格5000円で販売されているものが、実際は10000円で販売された実績がなく、はなからセール価格5000円で販売されているようなケースをいいます。もともと5000円でも利益の出る製品であることは言うまでもありません。
これは一般消費者に誤解を生ぜしめる商法ですから、公取委の摘発対象にもなります。
しかし、常態化していて数が多過ぎ、事実上野放し状態なのです。
福袋に詰め込まれる商品も、おおくは福袋用に開発された商品ですから、もともと正札があるわけではありません。(50000円分の商品が福袋で10000円)などと謳われていても、そのまま鵜呑みにできるものではないのです。
だいたいまともなメーカーの商品を投げ売りしたりしたら、メーカーも黙ってはいないでしょう。自社の製品に誇りを持つメーカーはダンピングをほうってはおきません(じつはこれは価格制限で独禁法違反のおそれがあるんですけどね)。
福袋商法もひとつのビジネスモデルですし、全否定するつもりはありません。本当に良品を詰め合わせてお客様に楽しんでもらおうという姿勢のお店もあるとはおもいます。
結局はCS(顧客満足度)ということですから、とやかく言えませんが、供給する側にも様々な戦略があるのだということを書いてみました。
量販のみなさん、ごめんなさい。
あけましておめでとうございます。
昨年は大変お世話になりました。本年も倍旧のご愛顧の程、宜しくお願い申し上げます。
さて、本日より通常営業開始です。
お時間のある方はぜひお立ち寄りください。
お待ちしております。
本年最後の営業日になりました。
今年後半、ホームページをリニューアルしてからは、WEB上での商談が多くなり、遠方のお客様ともずいぶんお取引させていただきました。また修理、加工の依頼が途切れることなく、プロショップとして一定の役割が果たせたのではないかとおもっております。
リーマンショック以降の景気の落ち込み、デフレ時代の到来と、業界の周辺環境は依然厳しいですが、良いお客様に恵まれまして、あらたな年を迎えることが出来そうです。
心から感謝いたします。
来る年もより良い商品、より良いサービスを提供させていただけるよう努力を続けます。
それでは皆様、良いお年をお迎えください。
来年も宜しくお願い申し上げます。

*新年は2日から営業いたします。
フェイク
昨今、インディアンジュエリーが一般の方々の中にもずいぶん浸透してきた感があります。とりわけターコイズをあしらったものは人気がありますね。ネイティブ・インディアンを象徴する石であることは間違いありません。
そこで、このバックルをご紹介します。これは20年ほど前に、自分自身のために買い求めたものです。当時ビンテージウエアの買い付けで米西海岸を廻りましたが、南下してたまたま訪れたメキシコのシルバーディーラー(オーナーは白人)で一目惚れしたんです。地厚なスターリングシルバーの台座の上に、見事なエングレーブが施され、目の覚めるようなブルーの大きなターコイズが3個嵌め込まれています。
気に入って何年か使っていましたが、真ん中の石を留めているシルバーのトリミングがゆるんで、石がカタカタと音を立てるようになりました。石が落ちる前に直しておこうと思い、慎重にトリムを開いて一旦石を外しましたが、石の裏側を見ると、切断面が真っ白なのです。…(あれっ?)これ、染め物じゃないの!…色の褪めた石を染料で染め上げたフェイクなのです。台座のハンドメイドのシルバー細工の出来の良さに、自然石だと思い込んでいました。(このバックルは今でも自分のお気に入りのひとつですが)。
この20年前の話をひきあいに出したのは、現在ターコイズということで流通している石の多くが、天然のままではないということを知っておいていただきたいからです。20年前にして、現地でも手を加えたものが流通していたのですから、現在も推して知るべしです。大多数は色を注したもの、または練り物とよばれる天然石を砕いて粉末にして樹脂で成型したものです。そもそもターコイズは割れ易く、非常に加工しにくい素材です。ジュエリーとして用いる場合の強度や見栄えを考えて、あるいはコストを抑えるため、さまざまな加工がなされるのは当然と言えば当然です。かならずしも消費者を欺く意図がある訳ではありません。
しかし当店では誤解を避けるため、インポーターのお墨付きがあるものに限り天然石と表記させていただき、それ以外の確認が出来ないものについてはすべて加工品(の可能性有り)として販売させていただいております。

*年内は31日まで通常営業です(火曜定休)。新年は2日から営業いたします。
年内最後?パッチ縫い付け
WEBでフライトジャケット関係のサービスをご紹介するようになってから、遠方からもたくさん問い合わせをいただいています。今日は神奈川県の方からご依頼いただいてD-1とA-2にそれぞれレザーパッチを縫い付けます。
宅急便で当方宛に送っていただきましたが、年末は荷物の着荷が大幅に遅れるのが通例で、午後8時の閉店時間に間に合わないことさえあるのです。しかし今日はなぜか平素より速く配送されました。担当ドライバーの方が優秀なのでしょうか?…それもあるかもしれませんが、やはり不況のため、デリバリーされる荷物自体が年末にしては少なくなっているのだとおもいます。
平成大不況は来年もまだ続くのでしょうが、当店は変わらない(今さら変えようがないけど)スタンスで、地道に営業を続けていきます。

*年内は31日まで通常営業です(火曜定休)。新年は2日から営業いたします。
ライダースウォレットのクリーニング&メンテナンス(補足)
昨日の日記の補足です。
レザー製品に適度なメンテナンスは必要ですが、購入直後にレザーオイルをベッタリ塗るのはあまり意味がありません。むしろ革の表面に開いたピンホールを塞いでしまい、通気性が無くなってしまうという弊害があります。湿気が溜まり易くなり、カビの原因になったりもします。
とくにタン色のハンドバスケットやカービングの工程は、
革に水を打って刻印→乾いたら全体にニートラックというラッカーを塗布(凸面保護のため)→凹面に色を入れるためペースト状の塗料を全体にすりこむ→すぐに拭き取り→凸面は塗料が拭き取られ、凹面だけに色が残る→仕上げ剤を塗って凹面の塗料を定着させるとともに全体をコーティング→陰影のあるクラフト完成
という手順で、仕上がり時点で表面は2回コーティングされていることになります。この状態でさらに上からバターのようにミンクオイルなど塗っても意味無いのです。凹面にオイルのロウ質が残って白くなることもあります。
ということで、新品購入後、半年以上はそのまま使っていただけると思います。
メンテナンスが必要な段階になっても、出来るだけ薄く伸ばして一定の脂質を加えてやる程度で十分です。当店では、メンテナンス用には伸びが良く塗り易いコロニル社のものをおすすめしています。
ライダースウォレットのクリーニング&メンテナンス
昨日下取りさせていただいたFUNNYのバスケット・ウォレットのクリーニング&メンテナンスをしています(当店は衣類商として古物営業・買い取りの許可をもっています)。
かわりにお客さまには熟考の上、最高クラスのウォレットをお買い上げいただきました。
さて、かなり使い込まれたこのウォレット、当店のメニューにしたがって細部まで一通り手を入れます。まずネジ留めされているコンチョ、ドロップハンドルを外します。この段階でネジ、スナップのキャップ、ナスカンが傷んでいれば組付けのときに新品交換しますが、今回は交換不要でした。シルバーのコンチョは小キズが目立つのでバフがけすることにします。本体は、内側ポケットの裏面の仕上げの糊が剥がれて毛羽立っていますので、あらためてヘラでペースト状の糊を打って、ガラス片で磨きこみます。キーホルダーも同様に裏面を仕上げ直します。表面のバスケット彫りの部分は、まずBALMで汚れ落しをしますが、バスケットの場合は凹面がありますので、歯ブラシを使用します(色焼けと、デニムの色が移っている部分は元にはもどりません)。その後、全体にコンディショナーを塗って仕上げます(革が枯れかかっている場合はフットオイルを使用しています)。
リフレッシュされ、程よく使い込まれた革の味わいが出て、とても良い雰囲気です。
FUNNYの製品は元々のつくりが良いですから定期的なメンテナンスで長くお使い頂けます。
本日の修理品
今回はバズのN-1です。先回同様、ジッパーのスライダー故障です。これは昨年販売させていただいたものですが、ワンシーズン着用しただけでジッパーの開閉が出来なくなりました。このN-1に付いているコンマティックの真鍮ジッパーはMADE IN USAですが、最も故障が多いのではないでしょうか。(N-1の販売数が多いこともありますが)。販売時にすべて動作確認をしていますが、新品の時点でも多少動きにバラツキがあり、精度が高いとは言えません。故障の大半は、スライダーが変形してムシを噛み合すことが出来なくなっているので、大きな変形でなければラジオペンチで修正も可能です。今回は大きく変形していて、クラックになっているようでしたので、メーカー対応にて部品交換させていただきました。

*年内は31日まで通常営業です。新年は2日から営業いたします。
本日の修理品
2001年頃まで生産していたシュガーケーンの3RDモデルです。当時はラインナップにノンウォッシュ(20790円)しかなく、レア生地からはき込んでいただいたものですが、素晴らしいタテ落ち感です。このモデルは現行のスタンダードモデル生産開始とともにフェードアウトしましたが、力織機で織ったゴリゴリした触感が非常に良かったと思います。旧式の力織機は生産効率が非常に悪く、生地幅がわずか70センチほどで、織れる長さも一台の織機で一日2反(100メートル)程度ということで、国内では主に岡山県で生産されています。糸のテンションがきちんと引き揃わなかったり、ネップ(糸のかたまり)があったりしますが、それがデニム本来の味わいとなり、非常に魅力があります。一方現在主流の高速織機は生地幅もW(148センチ)があたりまえですので、生産性が全く違いますね。シュガーケーンのジーンズはラインナップも多くなりましたが、いまだに力織機にこだわったアナログ生産を続けています。
さて、このジーンズは以前に股ぐりと膝とポケットの修理をしていますが、今回は前立て横の穴開きを塞ぎ、崩れてしまったボタンホールを修復しました。これでまたしばらくははいていただけるのではないかと思います。