本日の修理品

本日の修理品
強靭なブラウンダックのワークパンツの裾上げです。
ダック生地は太い糸で織られた平織り生地のことで、キャンバス、帆布(ハンプ)とほぼ同じ意味です。キャンバスはその名の通り、表面に白い顔料を塗って油絵を描くのに用いられますし、帆布はヨットの帆の素材として用いられたことからその名があります。
裾上げはオリジナルに準じてシングルミシンでおこないますが、ワークパンツの裾の巻き幅はやや太く、1,2センチくらいでとります。シームは両側とも3本針で巻き伏せられており、非常に曲げにくいので、プライヤーで挟んで処理します。お店によっては、シームの部分を木槌でバンバンたたいて折り込んでいるところもありますね。
このくらいの生地は工業用の地縫いミシンでならサクサク縫えます。
余談になりますが、ミシンの仕様を大雑把に分けると、工業用、職業用、家庭用ということになるとおもいます。
工業用は、単一機能で工場で一日中ぶっ通しで踏み続けて使うことを前提につくられていますから、頑丈なのは言うまでもありません。重い鋳物のボディで、モーターも大きなものが別体で取付けられます。
職業用は、手内職のプロの方達が使うポータブルタイプのミシンです。こちらは基本構造は工業用と変わりませんが、モーター内蔵型で、ボディはプラスチックを多用しているので、持ち運び可能です。耐久性は工業用には及びませんし、動力が弱いので厚物縫いも限度がありますが、故障も少なく、メンテナンスをちゃんとすれば20年以上は充分使えます。懇意にしているミシン屋さんによると、趣味で古布の縫い物をしているおばちゃんたちにも人気があり、中古の出物などがあるとすぐに売れていくそうです。
家庭用は、オモチャに毛が生えたようなもので、私は使い捨てミシンと呼んでいます。以前、作動しなくなったのを預かって修理しようとバラしたことがあるのですが、最も負荷のかかるギヤ周辺のパーツにプラスチックがコーティングしてあるのを見て、こりゃダメだと思いました。マンション等で使うことを考慮して、音が出ないように対策してあるのでしょうが、これでは抵抗の大きな生地など縫えるはずありません。内部パーツのプラスチックが経年劣化してひび割れたのが故障原因でしたが、そのパーツもメーカーの方では欠品しており、年数が経ち型替わりしているので対応出来ないとあっさり言われました。その時点でミシンではなく粗大ゴミになりました。よくTVショッピングなどで、使いもしない余分な機能満載で、『こんなに厚い生地の重ね縫いも楽楽〜♪』などとやっていますが、ウソつけ!と思いながら観ています。非力なモーターが焼き付きそうになっているんじゃないでしょうか?
宣伝に乗せられて買ったら後悔すること請け合いです。