グロリア

グロリア
この映画が日本で劇場公開された時、たしか「タクシードライバーを越える衝撃!」などと宣伝文句が踊っていたので、劇場まで足を運んだ記憶がある。
劇場はガラガラだったが、作品は期待以上であった。
俳優にして高名な映画監督であったジョン・カサベテスが、奥さんのジーナ・ローランズを主演に据え、ニューヨークの暗部をシャープな映像感覚で描ききったハードボイルドの傑作。
物語りの軸は、父親がギャングの金をくすねた事で家族全員を殺害された移民の少年と、いきがかりでその子をかばう事になったアバズレ中年女の心の交流である。反発しながらも結びつきを深めていく少年と中年女。しかしジーナ演じるアバズレはただものではない。機転がきき、度胸満点で、ここぞという時にはためらいなく追手のギャング相手に拳銃を撃ちまくる。くわえ煙草が実にサマになっており、ウィットに富んだセリフにもほれぼれさせられる。
これはニューヨーク版の任侠映画と言ってもいいかもしれない。
そしてヒリヒリするような緊張感が続いた後の、ラストシーンがまた素晴らしいのだ。
レンタルビデオ店で手軽に借りられるので、是非ご覧いただきたい。

付記/この作品は、後年シャロン・ストーン主演でリメイクされたので観にいったが、やはり旧作には及ばなかった。