友、再び遠方より来る

友、再び遠方より来る
一昨年の8月5日以来の再会である。
(異能の人)億万長者のH君が前触れもなく訪ねてきた。
彼は若いころに自動車関連の仕事で一山当て、その後海外での商売にも成功して大きな資産を形成したのだ。
今日は珍しくドレスシャツを着て、衿もとにはカラフルなスカーフなどを巻いている。
足元はオーストリッチのブーツで、昔からウエスタンブーツを愛用していた彼がトニーラマ本社にまとめて特注したカスタムメイドの一足である。
腕時計といえば金無垢のデイトナで、このアンバランスな出で立ちがH君そのものなのだ。ちなみに彼は時計を買うと、自分で裏蓋にイニシャルを(釘で!)ガリガリと彫りつける習慣があるので、このデイトナも同じようにしている。それで資産としての価値が数十万下落するが、そんな事はもちろん気にしていない。
ホームレスのようなザンバラ髪は昔のままだが、年を取って半分ぐらい白髪になってしまった。
今日は某信用金庫の営業マンを召使いのように引き連れて現れた(H君は金を借りているのではなく大口預金者)。
黒塗りのロールスロイスで登場したが、この他にも赤のロールス・コーニッシュ(コンバーチブル)を普段使いにしているそうだ。昔からアメリカ車もたくさん所有しており、私がアメ車に乗るようになったのも元々は彼がきっかけである。
最近は何を思ったのかボランティアに精を出し、古い建物の掃除を請け負って、自らその作業にあたっている。信用金庫の人は彼の召使いなので、休み返上で彼の作業につき合っているようだ。
こんなH君は、ごく普通の社会生活を送る人には到底理解不可能であろう。
あまりにも破天荒で怪しげで、側に寄るのもためらわれるかもしれない。
しかし自分の才覚だけでリッパに人生を切り開いてきた彼には彼のルールがあり、出鱈目に生きているわけではないのだ。
話をしだせば一瞬で昔に戻り、なつかしい話題に心温まる。
最近所用で知多方面に来る事も多いようなので、今後も旧交を暖めたいものだ。