ウエスタン(ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウエスト)

ウエスタン(ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウエスト)
あまりにもストレートな邦題が付けられた、マカロニウエスタンの父、セルジオ・レオーネの1968年の作品。
古い映画がDVD化されるのは、やはりそれなりの内容があるからだろうと思われる。
『夕日のガンマン』製作後に、主演にチャルールズ・ブロンソン、ヘンリー・フォンダらハリウッドのトップスターを据えて製作されたイタリア製西部劇の代表作。
冒頭の埃っぽい駅舎のシーンでは、全く無言の3人のならずもの達の表情を延々と追い、風の音しか聞こえない。観ているだけで口の中がざらつくような、これこそがマカロニウエスタンのテイストである。列車から降り立ったブロンソン(この頃、後にトレードマークになるヒゲをまだ生やしていない)は、ピースメーカーの早撃ちで待ち伏せしていたならずものをなぎ倒すが、その内の1人は『拳銃無宿』でマックィーンが使ったような、短く切り詰めたウインチェスターを使っている。
一転画面が切り替わると、従来正義漢のイメージが強かったヘンリー・フォンダ(ピーター・フォンダ、ジェーン・フォンダの父親)が冷酷な悪役で登場する。黒ずくめの服装で、噛みタバコを口に含み、ニッケル鍍金された長銃身のピースメーカーを使うのが実にさまになっている。
イタリア女優のクラウディア・カルディナーレ演ずる西部の女も、ステレオタイプだが魅力的だ。
インディアンとの混血の盗賊を演じたジェーソン・ロバーツも持ち味を活かしており実に良い。
劇中には西部劇の名作へのオマージュと受け取れるシーンがちりばめられ、監督の念いが詰った作品になっている。モリコーネによるハーモニカとギターの侘しい音楽が乾いた映像にマッチして効果的。
しかしこの映画、過去のこの手の作品を観慣れている人は面白く観ることも出来るだろうが、そうでなければやたら冗長で動きの無いシーンに退屈するだろう。BGMのハーモニカが子守唄のように眠気を誘うにちがいない。
観る人によってはっきり評価が異なる作品であると思う。