怪奇現象

怪奇現象
毎年お盆間近のこの時期になると、きまって店内で不思議な音が鳴り出す。
ピシッ、ピシッと小枝を踏みつけて歩く様な音である。
備え付けの音響器機のノイズではなく、ミシンなどの機械音とも違う。何の動きも無い空間で、突然音が鳴るのだ。
ある人はこれをラップ現象と呼ぶ。
…恐ろしいことである。
もしかしたら店の奥に鎮座するカウボーイきよじに憑依した霊の呪いかもしれない。日頃からとことん不信心なオーナーを戒めるサインととれなくもない。スピリチュアリズムの大家、江原啓之大先生であれば、たちどころに霊界からのメッセージであると断言するにちがいない。
しかーし…じつはこれ、無垢の木材が乾燥していく過程で反りが出て、内部がひび割れる時の音。特に日射しの強いこの時期に集中する。
当店の床には3,5センチ厚の無垢材を使っており、施工段階で100%水分が抜けてはいなかったということだ。完成時は隣り合う木材の合わせ目はピッタリで、紙一枚入らなかったが、15年以上経った今では3〜5ミリ隙間が空いている。その分乾燥して木が痩せたということになる。これはもちろん施工段階である程度予想が出来たことである。普通はコンパネを敷いた上で頑丈で変形しないウレタン仕上げのフローリングにするが、どうしても素地のままの材木を使いたかったのでこの仕様にした。
今では変色して傷だらけだが、良い味を出している。

画像下/余った床材を利用して製作したブーツ用のラック。古材風にペイント。