名著であるため、ご紹介

名著であるため、ご紹介
『憚りながら』後藤忠政著 宝島社

かなり話題になった本なのでお読みになった方もおられるだろう。
山口組きっての武闘派として数々の事件に連座し、引退後は仏門に入った元後藤組組長のインタビューを纏めたものである。
静岡の没落した名家に生まれ、極貧の少年期を過ごし、愚連隊を経て地元の顔役、東京進出後は経済ヤクザとしても鳴らした男の一代記。
かつて伊丹十三の襲撃事件や、創価学会との蜜月と対立、政財界との関係などでマスコミに取り上げられることも多かったが、そのあたりを本人がどう語るのか興味があった。
読後の印象としては、かなりたんたんと、正直に語っているとおもわれる。現役時代は尾ひれがたくさん付いて都市伝説のように話が膨らんでしまった事柄も多くあったようだ。
一方で、裏社会からの視点で、政界や、実業界の実態をかなり冷静にとらえている。
来し方を振り返り、自分自身のことを「しょせん、俺はチンピラだった」と総括する。
そして「憚りながら」と、小チンピラが跳梁跋扈する社会に対して物申す。
アングラ社会を生き抜いてきた著者だからこそ知りえたこと、感じえたことも数多く、言葉に説得力がある。
現代日本社会の裏側を垣間見ることが出来る、中々面白い一冊。