沈黙ーサイレンス

沈黙ーサイレンス
レンタルビデオを借りてきて鑑賞。
遠藤周作の著書の映画化ということだが、原作は読んだことなく、どこまで忠実に映像化しているのかはわからない。イタリア系のマーティン・スコセッシ(カソリック?)が長年温めてきた企画だそう。
160分以上の大作で、全編通じて江戸時代のキリスト教徒への幕府の過酷な弾圧が描かれる。
日本に入国した後棄教したとされる宣教師を探し出すため、潜入した2人のポルトガル人宣教師。キリシタンの農民たちに温かく迎えられるが、やがて追われる身となり、農民たちと共に捕まって「踏み絵」で棄教を迫られる。拒否したものは命を奪われる。江戸時代の為政者が、いかに残忍であったかが、これでもかというくらいに描かれる。
しかし、冒頭からキリシタンが一方的に被害者として描かれる展開に、ちょっと待ってくれと言いたくなった。
それ以前に、キリシタン大名がおこなった神社仏閣の破壊、僧侶の殺害、イエズス会が組織的に行っていた奴隷貿易などの事実が全く描かれていないのだ。劇中では、イッセー尾形が老練な奉行の役で、キリスト教が日本に根付かない理由を語ってはいるが、その悪行には触れていない。
なんだかキリスト教に都合の良い映画になっているように思えてしまう。
そもそも多神教の日本は、異教にも寛容だった(例えば七福神なんかは、異教神の寄せ集め)。
キリスト教国は侵略の先兵としてアジアに宣教師を送りこんでいたわけで、実態が発覚すれば摘発されて当たり前。洗脳された日本人はカルトの信者みたいなもの。お気の毒ではあるが…。
そうした前提がすっぽ抜けているので、これを「受難」として描かれても、どうにも感情移入が出来なかったのだ。
映像表現は素晴らしかったし、日米の出演俳優も良かったのだが…。