名著であるため、ご紹介

名著であるため、ご紹介
『クリント・イーストウッド ハリウッド最後の伝説』 マーク・エリオット著 早川書房

日本人の抱くクリント・イーストウッドの印象は年齢層によってかなり違いがあるように思う。
60代以上の方はフランキー・レーンの曲とともにTVシリーズ「ローハイド」のカウボーイを思い浮かべるだろうし、50代にとってはマカロニ(イタリア製)ウエスタンの大スターで、「夕日のガンマン」シリーズのテンガロンハットとポンチョの印象がひときわ強い。後に続く「ダーティ・ハリー」での44マグナムを使う刑事役もまさに彼のイメージである。40代の方々にも大物アクションスターとして認知されている。そして若い世代の方々にとっては数々の名作を生み出した映画監督で、その何本かには自ら主演もしているといったところではないだろうか。
これほど長いキャリアで活躍し続ける映画人はそうはいない。
本書の良いところは、その偉大な映画人の光の部分だけではなく、影の部分も冷静に見つめ、描き出していると言う点。すなわち女グセの悪さや、公私混同、俳優としての力量の無さなどもきちんと描写しており、自己宣伝で埋め尽くされたような伝記にはなっていない。
それだけに真実味があり、同世代のアクションスターから一歩も二歩も抜きん出て、現在も活躍し続ける大スターの評伝として読みごたえがある。