名著であるため、ご紹介

名著であるため、ご紹介
『永久凍土に生きる』山本七郎著 日本図書刊行会

終戦直前に日ソ不可侵条約を一方的に破棄したソ連軍に捕われ、日本に帰すと偽られてシベリア抑留された数多の日本軍人、軍属の人達。
関東軍に所属していた筆者は、3年あまり酷寒のシベリア開発に酷使され、生還した軍人であった。国家間の取り決めや、国際法などはなから遵守する気のない国家に拉致され、満足な食料も与えられず、長期抑留者は実に11年間もの奴隷労働に堪えねばならなかった。その間数万人といわれる多くの日本人が命を落としていった。スターリンは捕虜を単に使い殺しの労働力としか見ていなかったのだ。一方使役を通じて知るソ連国民の生活も、共産主義の理想とは程遠い窮乏ぶりであったことが克明に描かれる。筆者は素顔のロシア人との交流を通じ、かれらもその国家体制の犠牲者なのだとある程度同情的でもある。一方で戦後になり、シベリア抑留のことがソ連はもちろん、なぜか日本の外交史の中にも記載されず(エリツィン政権になってから謝意表明、本書は1992年上梓)、日本の歴史としてもほとんど無視されてきたことを嘆くのである。
すでにソ連邦は崩壊したが、北方領土も返って来ず、強権国家の伝統はKGB上がりのプーチンにしっかりと受け継がれているということを、日本人はあらためて認識すべきではなかろうか。
本書には元自民党の重鎮で、自らも抑留経験のある相沢英之氏(司葉子の旦那)が推薦文を寄せている。
ところで露助/ロスケという表現が、ロスキー(ロシア人の意)が語源で、もともと差別表現にはあたらないということを本書で知った。もちろん日本人が発する場合はどういう意識で使うかが問題だろうが、私はロシア人を侮蔑する表現のつもりで常用していたのに、意外である。

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