名著であるため、ご紹介

名著であるため、ご紹介
『愛国者は信用出来るか』鈴木邦男著 講談社現代新書

生長の家信徒として学生時代を送り、産経新聞の記者を経て新右翼団体・一水会を結成した鈴木邦男氏は以前からTV出演も多いので、一般の方にも良く知られた存在であると思う。
朴訥な東北弁で優しげに語り、激昂したところなどまず見たことがない。しかしかつては極めてラジカルな民族派で、公安事件での逮捕歴も数知れない活動家であった。
「腹腹時計と狼」以降のこの人の著作は大体読んでいるが、その鈴木氏が昨今の傲慢で偏狭、押し付けがましい「愛国心」の押しつけを憂い、その危険性すら訴えているのが本書である。
いわゆる右翼や保守派の政治家とは異なる立場で論陣を張っているのだ。
もともと女帝論、外国人参政権にも寛容で、極左活動家とも交流があり、このあまりに融通無碍な姿勢が同じ陣営からも批判の的になっている鈴木邦男氏。
現一水会はじめ新右翼の人達も、女帝論や外国人参政権には明確に反対しているはずである。また死刑廃止論に与するなど、一般的な保守の思想とも相容れない言動が多い。
40年以上の活動歴で誰よりも多く国旗を掲揚し、靖国神社に参拝し、君が代を歌った鈴木氏が辿り着いた思想、氏が考える「国柄」とはなにか。
独自の視点で現代の「愛国心」、「愛国者」を語り、デリケートなテーマにも踏み込んだいるだけに、すべて肯首出来ないまでも問題提起として読みごたえがある一冊。