ミレニアム

ミレニアム
非常に話題になった映画だったが、なじみのないスウェーデン映画というのと、鼻ピアスをしたヒロインというのに食指が動かずスルーしていた。
遅まきながらビデオを借りてきて自宅で観た。
2時間半以上の長尺の作品ながら、しっかりと構成され、テンポも良く、推理小説の映画化としては非常に完成度が高い。登場人物がたくさんいるが上手く整理されているので途中でこんがらがってしまうこともない。
原作はスティーグ・ラーソンの世界的なベストセラー。
物語りは、体中にピアスをつけ、タトゥーを入れた中性的な天才ハッカーと、中年の社会派ジャーナリスト(原作者が自分を投影した?)がコンビを組んで40年前の少女失踪事件を解き明かしていくというもの。スウェーデンの辺境な島が舞台となっている。周辺人物たちの複雑な人間関係を徐々に解きほぐしていき、事件の核心にせまっていくが、同時進行でメインキャスト達の人間模様もきちんと描きこまれている。事件は意外なかたちで結末を迎えるが、背景には第二次大戦時のスウェーデンにおけるナチズムの影響があり、原作者の政治的主張がここに盛り込まれている。
既に亡くなったスティーグ・ラーソンは、筋金入りの共産主義者で、反ファッショ、反差別主義をかかげるジャーナリストでもあったということだ。したがって本作でもファシスト=快楽殺人者としてこれ以上ないくらいに悪辣に描かれている。また旧約聖書を引用し、反ユダヤ主義とキリスト教とを関連づけて語られる部分もある。この辺の一方的な決めつけ方はマルキストならではである。日本で言えば森村誠一みたいなヤツだろうか。
しかし原作者の思想はともかく、スリリングな娯楽作品として評価するには充分な内容であろう。
ハリウッドでリメイク版も製作されたようなので、こちらも観てみたい。

追記/同じ北欧で極右によるテロ事件が起こったが、反イスラムのキリスト教原理主義者の犯行だと報道されている。背景には欧州の移民政策の失敗が指摘されている。
人権屋が大好きな「世界一人権意識の発達した国」は多くの矛盾も孕んでいるようだ。