HISTORY OF VIOLENCE(ヒストリー・オブ・バイオレンス)

HISTORY OF VIOLENCE(ヒストリー・オブ・バイオレンス)
近頃近所のレンタルビデオ屋では、旧作を50円で借りられる。
安いからってたくさん借りるというものでもないと思うのだが、近くに新しく出店してきた同業者への対抗価格だろうか?
さて、好きな俳優のヴィゴ・モーテンセンの主演作という事で目に留まったこの旧作品、結構な話題作だったようです。
監督は鬼才、デヴィッド・クローネンバーグ。競演はマリア・ベロ、エド・ハリス、ウイリアム・ハートといったいずれ劣らぬベテラン揃い。
主人公は田舎町でダイナーを経営する穏やかな物腰の男。妻と子供二人と静かに暮らしている。ある日、そのダイナーに流れ者の二人組の拳銃強盗が押し入るが、主人公は電光石火の早業で反撃し、逆にその強盗をあっさり撃ち殺してしまう。連続強盗を撃ち殺し、一躍町のヒーローになった男の元には取材が殺到し、ニュースは全国に配信される。ところがしばらくすると、男の元に遠く離れたフィラデルフィアからマフィアがやってきて別の名で呼びかけ、つきまといはじめる。自らの過去を封印して地道な暮らしを続けてきた男は、過去のしがらみとの対決を余儀なくされるというストーリー。
ヴィゴ・モーテンセンは抑えた演技で、ひっそりと暮らしながらも瞬間的に獣のような暴力性を発揮する男を好演しています。
知的な妻を演じたマリア・ベロは芸歴が長く、TV「ER」の女医役で日本でもなじみがある女優。「コヨーテ・アグリー」では姉御肌のバーのママ役がハマっていた。隻眼のマフィアを演じたエド・ハリスはいつもながらそつがなく、偏執狂的なボス役のウイリアム・ハートはベテランの風格。
血なまぐさいシーンもあるが、ただのバイオレンス映画の類いではない。
深読みすれば、カナダ人の監督が、ちょっと離れた視点でアメリカ社会に内在する暴力性そのものを描きたかったようにも受け取れる。
玄人筋からの評価も高く、多くの映画賞を受賞しているなかなかの傑作。

付記/監督のクローネンバーグはこの後、再びモーテンセン主演で「イースタン・プロミス」を製作するが、この作品もとても味わい深い傑作だった。