名著であるため、ご紹介

名著であるため、ご紹介
『スピリチュアリズム』苫米地英人著 にんげん出版

中高年の方には「オウム信者の洗脳外し」をやった脳機能学者として知られる苫米地博士。
その彼が、オウム事件後にも若者の間に蔓延するスピリチュアルブームに警鐘を鳴らす。日本人が陥りやすい洗脳の罠を脳科学的なアプローチで分析し、詳しく解説する。
以前にご紹介した『予言の心理学』も、スピリチュアリズムに対する処方箋として優れた著作だったが、苫米地氏はこの本の中で、ブームの元凶となっている人物を、個人名を上げて批判する。曰く、
中沢新一=宗教学者として、オウムの教義を作り上げた当事者。にもかかわらず、訴追されることも無く、学者の地位を保っている。
江原啓之=本人は典型的な自分探し君で、自身が幻覚を見ていることにも気付いていない。つまりは騙している自覚がない。
細木数子=恫喝し、判断力を奪う催眠商法を使う確信的な詐欺師。
そして、視聴率優先でこれらのイカサマ師を重用するTVメディアも同罪であるとする。
仏教会や、バチカンが、「輪廻転生」を公式に否定しているにもかかわらず、日本人独特の死生観がそれを受け入れてしまうのも、ブームの一因である。
ところで洗脳の手法を取り入れているのはオウムのようなカルトに限ったことではなく、マジョリティとなった伝統宗教も同様である。つまるところ、社会がすでに持っている価値観と、どこまで乖離しているかということが問題になるのだ。
苫米地氏はこの本の中で、どこからがカルトかという判断基準も明示する。
それは、布教に名を借りた労働搾取が伴うかどうか、信仰と商売がワンセットになっていないかといった点である。そしてスピリチュアリズムの最大の悪弊は、人間を思考停止させ、現実を変えていこうという主体性を奪ってしまうところにあると指摘する。それがカルトへの入り口になっている。
そしていったん取り込まれてしまうと、抜け出すことは容易ではない。人生が大きく損なわれることも少なくないのだ。
そうなってからでは遅いので、社会経験の少ない若い世代にこそ本書を読んでもらいたい。