名著であるため、ご紹介

名著であるため、ご紹介
『風のアナキスト 竹中労』鈴木義昭著 現代書館

最近、大画面のTVでYoutubeを観ていたら、生前の竹中労さんが討論番組でしゃべっている映像を、誰かがアップしていた。
1990年頃の番組で、癌で他界される少し前のもの。
物書きでありながら、その口上は「話芸」と呼べるほど人を惹きつけ、極めて扇動的である。
このころは「イカ天」の審査員もしていたから、音楽評論家と認識していた人の方が多いと思うが、この人は只の文化人ではなかった。
画家の竹中栄太郎の息子として生まれ、東京外語大中退、日本共産党で非合法闘争を指揮し、除名されてからは日雇い労働者を経て芸能記者、芸能人のゴーストライターとなる。ただ糊口をしのぐためだけではなく、日本の大衆芸能を深く愛し、理解していた。
根っからの反権力で、武勇伝は数知れず、「ケンカの竹中」の異名をとり、討論会でもしばしば激昂して暴力沙汰を起こす。逮捕歴も多数で、投獄もされている。極左のイデオローグとして重信房子のアラブ赤軍(日本赤軍)の擁護者であり、一方で新右翼とも「心情的に」連帯する。俗人からは理解不能の行動も、竹中の思想の中では矛盾がないのだ。
多くの人の怒りを買い、誹られながら、同時に多くの人に愛された孤高のアナキスト。
本書は竹中の弟子筋にあたるジャーナリストの著作だが、竹中の著作の中から多数の文章が引用されている。
複雑怪奇な思想家、竹中労を理解するための入門書のような一冊。