HEREAFTER

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いつのまにか大監督になってしまったクリント・イーストウッドの最新作を観てきました。
俳優としてのイーストウッドは、中高年にとってはマカロニ・ウエスタンのスターであり、続くダーティ・ハリーシリーズのキャラハン刑事役のイメージが強烈ですが、演じ手としてはけして器用な方ではないと思います。しかし、演出する側に立って創り出す作品はどれもこれも素晴らしく、ジャンルも驚く程多岐にわたっています。
このヒアアフター(来世)は、自然災害で臨死体験をし、それによって人生観が変わってしまったTVキャスターの女性、双子の兄を不慮の事故で亡くし、寂しさのあまり自称霊能者を尋ね歩いて何度も失望する少年、その能力ゆえに人生に傷つき、ひっそりと生きる(本物の)霊能者の3人の人生を軸とした人間ドラマです。後半になって3人の人生が交錯しますが、悲しさをひきずりながらも前に進もうとする人間をあたたかく描いており、ジャズに造詣の深いイーストウッド監督選曲のBGMもじわりと心にしみるものがあります。印象的なラストシーンは、解釈の仕方によって違った意味あいをもってくると思います。
この作品は(来世)をテーマにしていますが、心霊ドラマの類いではありません。
あくまでも今を生きる人間に焦点を当てた素敵な作品です。

追記
この映画を観ながら、ふと以前読んだ立花隆氏のルポルタージュ『臨死体験』を思い出しました。
世界中から死に瀕して生還した人々の「死の記憶」をデータとして集め、直接取材し、死後の世界についてまじめに考察した意欲作です。
死後の世界について立花は断定的に否定はしていなかったと思いますが、その体験事例の多くは脳内麻薬(エンドルフィン?)の作用ではないかということです。その根拠として、生前の宗教観によって体験内容が決定的に違う点をあげていました。
例えば、日本人の臨死体験では三途の川が出てきたり、お花畑が出てきたりしますが、西欧ではそんな事例は無く、キリスト教圏では光に導かれる体験が多いといったように、宗教的、文化的な背景によって内容が異なるのは、やはり脳の中での体験だからではないかといったことが書かれていたと思います。