名著であるため、ご紹介
『宿命の子』高山文彦著 小学館
現日本財団会長の笹川陽平氏の半生を追ったノンフィクションだが、紙面のかなりの部分は競艇事業の創始者である父、笹川良一氏に割かれている。
そういう意味では笹川ファミリーの評伝といってもよいかもしれない。
ここ数年、笹川良一氏については、史実に基づいた詳細かつ客観的な伝記が出版され、それまでの左翼マスコミによって貼り付けられた悪評とは全く異なる実像があきらかになっている。
しかし90年代当時、世間に対して一言の言い訳もせず、部下の裏切りにも目を瞑って黙して死んでいった父の、負の遺産を背負い込んだ陽平氏の苦労は並大抵のものではなかった。反笹川キャンペーンによる悪評ばかりか、金銭的にも莫大な負債(80億円)を背負い込み、よほど強靭な精神力がなければ乗り切れなかったであろう。
しかも艶福家だった良一氏は複数の家庭を持ち、兄二人とともに私生児として生まれた陽平氏は、長年ほとんど下男と同様の扱いを受けて過ごしている。世界中の人々に対し、分け隔てなく慈善を施した日本の黒幕は、一方で自分の息子たちには極めて冷淡な扱いをしたのだ。
しかしその父の晩年を支え、死後志を継いで傾きかけていた事業を立て直し、世界中に自ら足を運んでハンセン病をほぼ駆逐した笹川陽平氏。
「巨大な利権を引き継いだ御曹司」という世間のイメージとはかけ離れた篤志家の姿が浮かび上がる。
700ページ近い大作だが、慈善活動の裏面史ともいえるたくさんのエピソードも盛り込まれ、最後まで飽きさせない。
現日本財団会長の笹川陽平氏の半生を追ったノンフィクションだが、紙面のかなりの部分は競艇事業の創始者である父、笹川良一氏に割かれている。
そういう意味では笹川ファミリーの評伝といってもよいかもしれない。
ここ数年、笹川良一氏については、史実に基づいた詳細かつ客観的な伝記が出版され、それまでの左翼マスコミによって貼り付けられた悪評とは全く異なる実像があきらかになっている。
しかし90年代当時、世間に対して一言の言い訳もせず、部下の裏切りにも目を瞑って黙して死んでいった父の、負の遺産を背負い込んだ陽平氏の苦労は並大抵のものではなかった。反笹川キャンペーンによる悪評ばかりか、金銭的にも莫大な負債(80億円)を背負い込み、よほど強靭な精神力がなければ乗り切れなかったであろう。
しかも艶福家だった良一氏は複数の家庭を持ち、兄二人とともに私生児として生まれた陽平氏は、長年ほとんど下男と同様の扱いを受けて過ごしている。世界中の人々に対し、分け隔てなく慈善を施した日本の黒幕は、一方で自分の息子たちには極めて冷淡な扱いをしたのだ。
しかしその父の晩年を支え、死後志を継いで傾きかけていた事業を立て直し、世界中に自ら足を運んでハンセン病をほぼ駆逐した笹川陽平氏。
「巨大な利権を引き継いだ御曹司」という世間のイメージとはかけ離れた篤志家の姿が浮かび上がる。
700ページ近い大作だが、慈善活動の裏面史ともいえるたくさんのエピソードも盛り込まれ、最後まで飽きさせない。