良書とは言えませんが、反面教師としてご紹介

良書とは言えませんが、反面教師としてご紹介
『長崎市長 本島等伝 赦し』横田信行著 にんげん出版

市長在任中、昭和天皇の戦争責任発言で右翼に銃撃され、瀕死の重傷を負った本島氏の自伝です。
本人の出自についても詳しく書かれており、長崎の隠れキリシタンの末裔であり、被差別部落に私生児として生まれた本島氏は、極貧の中で苦学をしながら成長します。長じて地方政界に入り、頭の良さと清濁合わせ飲む懐の深さで、自民党の有力政治家として頭角をあらわします。けして清廉な人ではありませんが、実務においては優秀な人で、多くの実績を残しています。そして社会的弱者(あくまで本島氏の基準でですが…)に対する手厚い処遇は、この人の政治信条なのでしょう。どこか京都の野中広務さんに通じるようなところがあります。しかし、その出自ゆえか弱者に思いをよせるあまり、首長としてのバランス感覚が欠けているとおもわざるをえません。昭和天皇批判の他、原爆の問題では公務として渡韓し、日本で被爆した韓国人を訪ね、「すべて日本の責任です」と言葉をかけ、涙を流して謝罪した上に市の予算に韓国人被爆者の支援金まで計上しています。
この人は一体どこの国の政治家なのか?。
当時日本国籍だった韓国人に対する補償は、日韓基本条約で莫大な補償金を払い、とっくに片付いています。それを日本の側から問題をむし返すように土下座外交までしてどうしようと言うのか。仮に、韓国人被爆者が充分な補償を受けられないでいるのなら、それは韓国の国内問題で、補償金の分配の仕方に問題があるのです。
皮肉な事に四選があやぶまれた本島氏は、銃撃事件で同情票が集まり、再選を果たします。
私の記憶でも、当時のマスコミは、まるで正義を貫いた政治家の鏡のような扱いで、国益という視点の欠けたこの人物を持ち上げていました。
本島氏は五選目にして落選しますが、その後かえって足かせが取れたかのように饒舌に「反戦平和」を語り出します。その言葉は、ほとんど社民党に近いような現実離れした平和路線で、かつて自民党に籍を置いた人とは到底おもえません。
『赦し』…本書のテーマでもある赦しとは、一体誰が誰を(あるいは何を)赦すのか?
このキリシタンの末裔が本書で語る日本の責任論、戦争犯罪論などは自虐史観そのもので、どうにも理解し難いものでありました。