良書であるため、ご紹介

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『果たし得ていない約束 三島由紀夫が遺せしもの』井上豊夫著 コスモの本

この本は当店のお客様よりいただきました。
三島由紀夫が楯の会会員の学生とともに、市ヶ谷の自衛隊駐屯地に立てこもり、自衛隊の決起と憲法改正を訴えて割腹自殺を遂げたのは70年安保の年です。当時小学生だった私には事件そのものはうっすらとした記憶しかありませんが、驚いた親父が直後に出版されたサンデー毎日の特集号を買ってきて、それが長い間自宅にあったので、後年、掲載されていた辞世の句や、檄文を読み返し、何となく理解出来たような気になっていました。
三島氏についての論評はたくさん出ていますが、これは楯の会の副班長を務めた著者が、三島氏の真意を後世に伝えたい一心で著したものです。直接関わった人間だけが知るエピソードなども綴られています。
終章として掲載された檄文の中に「戦後の日本が経済的繁栄にうつつを抜かし、国の大本を忘れ〜国家百年の大計は外国に委ね、敗戦の汚辱は払拭されずにただごまかされ、日本人自ら日本の歴史と伝統を穢してゆく〜」とあります。
三島氏の指摘は、残念ながら自決後40年経った現代日本にもそのままあてはまります。
それはとりもなおさず日本がいまだ戦後体制を脱しきれていないということに他なりません。