ソルジャー・ボーイ

ソルジャー・ボーイ
70年代の地味な作品の中には、拾い物がけっこうある。
これは1972年の作品であるから、ベトナム帰還兵を扱った映画のはしりと言えるんじゃないだろうか。
ジョー・ドン・ベイカーを中心とした4人の若者は陸軍を除隊後、お金を出し合って牧場を経営することを夢見る。中古のキャデラックを買い、家族の反対も振り切って、カリフォルニアを目指して大陸横断の旅に出る。しかし厭戦感の拡がったアメリカでは、行く先々で出くわす人々の彼らを見る目は冷たく、様々なトラブルに巻き込まれる。ついにはお金を盗まれ、給油のために立ち寄った田舎町(その名もHOPE)で給油機を壊している所を見咎められ、発砲される。それが引き金になり、戦場から持ち帰ってトランクに積んでいた銃器、手榴弾で町全体を破壊し、殺人マシンのように住民を皆殺しにしてしまう。
それまでのフォークソングが流れるロードムービーが、唐突に凄まじい銃撃シーンに切り替わるのである。ついには出動した州兵と銃撃戦となり、私服から野戦服に着替え、特殊部隊のベレー帽を冠った彼らが射殺されるシーンで物語りは終わる。
その後の『ランボー』や『タクシードライバー』よりもずっと早くベトナム戦争後遺症をテーマにした映画で、ヒットはしなかったが、実に見ごたえのある作品である。
ちなみに強面のジョー・ドン・ベーカーは、今は太った脇役俳優だが、73年に主演した『ウォーキング・トール』も面白い作品で、暴力的な保安官を好演していた。