名著であるため、ご紹介

名著であるため、ご紹介
『新撰組顛末記』 永倉新八著 新人物往来社

まだ学生だった頃、TVで毎週放映されていた「新撰組始末記」を好んで観ていた。
新撰組の物語りはそれ以前も、以降も何度も映像化されているが、平幹二朗が近藤勇を重厚に演じたバージョンである。土方歳三役は古谷一行で、鬼のような副長をみごとに演じていたので、この俳優のイメージは私の中では固定化された。古谷一行といえば、金田一耕助ではなく、やっぱり土方歳三ということになる。他の登場人物も生き生きと描かれていたが、モデルだった草刈正雄が沖田総司役で出演したり、山南敬介を演じた高橋長英も良かった。夏八木勲(永遠の0でも重要な役所を好演)が演じた二番隊隊長の永倉新八も印象深い。テーマソングは角川博が伸びやかに歌っていた。
このTV版の原作は子母澤寛で、当時興味が湧いたので原作本も読んだおぼえがある。
ところで今回手に取ったのは、幹部隊員の中で唯一維新後も生き残った永倉の体験談を編集したもの。永倉の実子が昭和二年に初版を出したようだ。
近藤らと参加した新撰組草創期から、粗暴な局長芹沢鴨を排除するための内部粛正、池田屋事件などの歴史的な倒幕派との戦い等々、正に血で血を洗うような隊の歴史が克明に綴られている。
壬生狼と呼ばれて恐れられたのは、その剣の腕や組織力だけではなく、時には豪商をゆすって大金を拠出させたり、酒の上でのつまらない諍いで刀を振うなど、悪辣な所行もあったためだと当事者の口から語られている。
平然と人を殺めた彼らの存在が明治維新を数年遅らせたと言われるが、彼ら自身もまた歴史の波に飲み込まれ、そのほとんどが屍の山に埋もれていく。
それにしても幕末、明治維新というのは命の軽い時代であったものだ。
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と、ここまで書いたところで、そういえば平幹二朗も「永遠の0」に出演していた事を思い出した。戦闘で片腕をもがれた元特攻隊員の役だった。