キル・ザ・ギャング

キル・ザ・ギャング
最近の犯罪実録モノとしては出色の作品。
舞台は70年代のクリーブランド。アイルランド系のスラムに育ち、肉体労働者から腕一本で組合を牛耳るまでになった男と、イタリア系マフィアとの抗争が激化し、爆弾戦にまで発展した実際の事件の映画化。
原題はキル・ジ・アイリッシュだが、レンタルDVDには『キル・ザ・ギャング〜36回の爆破でも死ななかった男』と長ったらしく観たくなくなるような邦題がつけられている。しかしこの作品は当たりの部類だった。
たくさんの個性的な人物が登場するが、なんといってもキャスティングが素晴らしい。いずれも性格俳優としてキャリアを積んだ面々が多数出演し、出過ぎず、引っ込みすぎず、バランス良く演出されている。主演はアイルランド系のレイ・スティーブンソン。助演にはかなり太くなったヴァル・キルマー、怪しさ満点のクリストファー・ウォーケンはじめ、メソッド系演技派ヴィンセント・ドノフリオ、ボブ・ガントン、ヴィニー・ジョーンズ、マイク・スター、ポール・ソルビノ、ロバート・ダヴィと、印象深いが映画好き以外には名前までは知られてなさそうな俳優陣。懐かしの70年代ファッション、鋭角的なフォルムのキャデラックやリンカーン、スラムの街並み、この時代のデコラティブなインテリアもそつなく再現されていて、娯楽映画としての完成度は高い。