良書とはいえませんが…ご紹介

良書とはいえませんが…ご紹介
『殺人者たちの午後』トニー・パーカー著 沢木耕太郎訳 飛鳥新書

『深夜特急』などの著者、沢木耕太郎さんの訳書ということでおもわず手に取ってしまいました。
本書では、イギリス国内で殺人を犯した12人の殺人者が、自らの生い立ちや事件を起こす経緯、その後の人生を一人称でとつとつと語っています。年齢、性別、殺害に至った事情などさまざまで、多くのケースでは被害者にさしたる落ち度は無く、中にはたまたま通りかかっただけで被害にあったケースもあります。著者のパーカーは、服役中、あるいは仮釈放中の殺人者たちに慈愛の心で接し、秀逸なルポルタージュにまとめあげています。この種の犯罪者たちを、社会現象のひとつとしてとらえ、主に殺人を犯したあとの日々に視点を置いた作品です。

読後はしかし、どよ〜んと沈鬱な気分にさせられます。
こうもあっけらかんと語られてもな〜と…。
全く被害者に落ち度が無いケースでも、条件が整えば10数年で仮釈放になってしまうイギリスの司法制度も驚きですが、犯罪者が、被害者の心情に思いを寄せることがほとんど無く、済んでしまったこととして、これから自分はどう生きるべきかなどと前向きに語っています。
…さすが罪を憎んで人を憎まずのお国柄です。イギリスの犯罪者のみなさんは(神の愛)につつまれて、お幸せですね。

東洋の島国、日本には野蛮な死刑制度が存置されていて良かったと私は思っていますが…