名著であるため、ご紹介

名著であるため、ご紹介
『この命、義に捧ぐ 台湾を救った陸軍中将根本博の奇跡』 門田隆将 集英社

「義には義をもって返す」の精神で台湾を中国から救った旧日本軍人の実話。
終戦後4年を経た昭和二十四年、元陸軍中将根本博は蒋介石を救うため、わずか数名の有志とともに老朽化した密航船に乗り込み台湾を目指す。誰に命じられるでもなく義のために一命を懸ける元陸軍中将。彼をこの行動に駆り立てたものは何であったのか。
内蒙古で終戦を迎えた根本は、迫りくるソ連軍を前にして、本国からの武装解除命令を断固拒否し、部下の将兵、在留邦人を守るために交戦を継続した。交戦で時間を稼ぎ、結果的に多数の日本人を北京を経て帰国させることに成功した(武装解除に応じた関東軍の将兵らは無法なソ連によってシベリア送りとなった)。
その際に戦時中は敵将であった蒋介石が、内地へ引き上げる日本人同胞に最大限の便宜を図ってくれた恩義を深く心に刻む。終戦に際して死を覚悟した根本らは救われ、だからこそ、数年後に中国を追われた蒋介石の窮地を見過ごすことは出来ず、彼らとともに死ぬ覚悟で台湾に渡ったのだ。
軍事顧問として着任した根本は、抜群の統率力と戦術で中共軍から金門島を死守し、それが現在でも中国に最も近い台湾の軍事拠点となっている。
残念なことにこの日本人義勇兵の偉業は、微妙な政治バランスの上に成り立つ台湾の国史からは抹消されたままだったが、2009年になって国民党政府により遺族関係者に直接謝意が伝えられた。
義を貫いた帝国軍人と、友好国台湾の深い関わりが丹念な取材によって証される名著。