コンドル

コンドル
この75年のスパイ映画の傑作を最初に見たのはTVのロードショー番組だったと思う。
最初は充分内容が理解出来ず、ただ無表情なマックス・フォン・シドーの殺し屋ぶりが強烈な印象だった。
何度か観返すうちに私の中では評価が高くなり、最も好きな作品のひとつになった。
国際的な石油利権の獲得を背景にしたCIAの内紛がテーマになっているが、派手なスパイ・アクションものとは全く趣が違う。ロバート・レッドフォード演じる主人公はCIAの末端局員だが、主たる仕事は日がな一日世界中の書物を読んで、資料として局のコンピューターに入力する事。実戦経験などまったく無い。ところがある日突然その部署が3人の暗殺チームに襲撃され、同僚が全員射殺される。あやうく難を逃れた主人公(コードネーム・コンドル)は秘書の女性が護身用に持っていたコルト・ガバメントをとっさにつかみ、その場を離れる。局に連絡を取るが、またしても暗殺されかけ、もはや誰にも頼れない状況を悟る。たまたま知り合った女性とともに殺し屋の執拗な追及をかわし、逃亡を続けながら事件の核心に迫っていくというストーリー。
最後にはCIAに一矢報いるつもりで事件の全容を新聞社にばらすが、元上司の「掲載される事は無い」という確信に満ちたセリフで物語りは終わる。
この作品は小説がベースになっているが、脚本は良く練られていて、配役も良い。行きがかりでコンドルの逃亡を助けることになるフェイ・ダナウェイは、本作のような物憂いでちょっとなげやりな女性役にはピタリと収まる。そしてなんといっても長身のマックス・フォン・シドーの存在感は圧倒的で、本職さながらである。
昨今のスーパーマンのような不死身のスパイが活躍する映画に飽き飽きした方にお奨めしたい傑作。