店長日記

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パッチ縫い付け
以前もパッチの縫い付けをご依頼いただいた奈良県のお客様からです。
L-2、MA-1、B-10の3着にそれぞれご指定のパッチを縫い付けます。
B-10の背中には革製のブラッドチットを縫い付けますが、これには『来華助戦 洋人 軍民一豊 救護』とあります。これは、日中戦争時に、中国を支援するためにアメリカから送り込まれた義勇兵が撃墜された場合、中国人に『我々は支那を支援するために来ました。救助してください』の意味あいです。彼らは第二次大戦が始まる前に、すでに日本軍と交戦していたのです。米航空隊のフライトジャケットにオリエンタルなパッチの組み合わせが独特な雰囲気をかもしだします。
ディアスキン・グローブ
週半ばの暖かさはどこへやら、ここ数日、またぐっと冷え込みがキビしくなっています。
しかしそんな中でも、『真のライダー』のみなさんは愛車を駆ってやってきます。寒さで手足がかじかみ、顔は死人のように変色し、鼻水は凍り付いています。店頭でなにかモゴモゴと語りかけてくれますが、舌がまわらないのでよく聞き取れません。そんなときは、ほおほおと適当に相槌を打っております。
そんな冬場のライダーの友、ディアスキンのロデオ・グローブのご紹介です。
ウエスタンブーツメーカーのジャスティン製(本品は中国生産)のアウトドア全般に使用出来るタフなグローブで、当店では地味ながら長年の販売実績があります。
鹿革特有のしなやかさと丈夫さ、シンサレート(保温素材)で裏打ちされたつくりの良さ、価格も4900円(輸入時のレートで多少上下します)と非常にリーズナブルです。
そして鹿革の特性として、汚れたら丸洗いが可能なこともポイントです。両手にはめた状態で洗剤を付け、手を洗うようにゴシゴシ汚れを落とし、日陰に干して自然乾燥させればまた気持ちよく使っていただけます。
*春〜夏用の裏打ち無しのタイプ(3900円)も販売しています。
昨日は衣料品のサイズ表示が、素材や製造工程によって基準値からずれてしまうことを書きましたが、それとは全く別に、メーカーが戦略的、意図的に表示の仕方を変えることがあります。
レディース衣料の分野では、実際の寸法よりサイズを小さく表示(サイズ偽装?)されていることがあります。男性にはいまいちピンとこないかもしれませんが、女性にとっては自分のジーンズがSサイズであるのか、Mサイズであるのかは重大な問題のようです。したがって販売する側も、実際よりもサイズの表示が小さい方が売りやすいということになります。バカげていますが、店頭でスタッフからSサイズを勧められるか、Mサイズを勧められるかで購買意欲が違ってきたりします。ハナからLサイズを勧めることなど、御法度と言っていいぐらいです。実際にあるデニムメーカーでは、レディースラインのLサイズを全廃し、それまでS、M、Lの展開だったのを、SS、S、Mに変えてしまいました。でもこれは、単にサイズの表示をS→SS、M→S、L→Mと変えただけで、3サイズの展開(寸法)に変わりはないのです。全く偽装と言うほかないのですが、競合のキビしいレディース衣料ではそういった対応も必要なのかもしれません。
同じM、あるいはLの表記がしてあっても、メーカーやブランドによって実際のサイズがバラバラなのはみなさんご承知のことと思います。実は日本にはJIS(日本工業規格)によって衣料品のサイズ表示について一応の取り決めがあるのです。(例/Mサイズ=対応身長170センチ、ウエスト80センチ)しかし現実には実際の製品にはけっこうなバラツキがあります。無用な混乱を避けるためにも基準値に近いにこしたことはないのですが、なかなか難しいのです。以下、アイテムごとの問題点を列記してみますと…
*Tシャツ
綿100%素材では製品染め(丸染め)によって染色したものはかなり縮んでいることがあります。
また国内メーカーでもインポートのボディをそのまま使用しているケースでは表記が海外基準のままということがあります。
*スウェット
本格的な丸胴編み(吊り編み)などは、もともとサイズは安定しません。サイズ表示は目安程度にしかなりません。
製品染めや、強くウォッシュ加工されているものなどは、恐ろしく小さくなっていたりします。
*シャツ
カジュアルシャツなどでは縫い上げた後に製品洗いして出荷するケースがほとんどですが、素材によって大きくバラツキが出ます。縮率の大きなものは、あらかじめ縮み分を考慮して大きめにつくった上で洗いにかけますが、なかなか計算どおりにいきません。
*ジーンズ
これはメーカーにより対応もわかれていまして、未防縮のデニムを使用する場合でも、裁断時のウエストの実寸法でそのまま表示するメーカーと、洗った後の縮み上がり寸法を想定して表記するメーカーがあります。このため、同じ表示でも1〜2インチも差が出てしまいます。
*ベルト
これも製品の問題ではなく、メーカーの表示の仕方がわかれていて、ピンから5ツ穴のセンター穴までを実寸(例えば32インチ=81,3センチ)で表示するメーカーと、32インチのジーンズに対応する長さ(32+α)で表示するメーカーでは1インチ以上長さが違います。

購入の際には店頭での現物合わせがもっとも確実なのは言うまでもありませんが、WEBで購入をお考えの際には、製品の実寸法とお手持ちの衣料品との寸法比較が必須になりますね。
ウエスタンシャツのスナップ釦付け
当店ではSHOPオリジナルの製品としてウエスタンシャツをリリースしています。
既存のメーカー品もたくさん扱っていますが、どうしてもありきたりのデザインになってしまい、デコラティブなウエスタンシャツの面白さに欠けるため、自店で展開しようと考えたのです。極少ロットの生産で、一昨年頃からぼちぼちと始めました。こちらで型紙と縫製指示書、生地と付属品の一式を手当てして、裁断と縫製を職人さんにお願いしています。手裁断のため、柄合わせも完璧です。縫い上がったシャツにはウエスタンシャツ特有のスナップ釦をつけますが、これは当店の店頭で打ち込んでいます。四つのパーツから成り、上側がトップとソケット、下側がスタッドとリングという組み合わせで、生地を挟んでポンプでカシメて固定します。一定の圧力でカシメていかないと、使用中にポロリと取れたりするので、細心の注意をはらって作業しています。
本日の修理品
またまた出ました、ジッパー故障です。
こちらは1999年に販売したバズのOLDIN社実物ネームのB-10です。表生地がコットンではなく、コットンとレーヨンの交織というめずらしいタイプで、ドリズラージャケットのようなテカりがあります。このタイプには、L-2と同じクラウンのスプリング・カムロック式のジッパーが付けられますが、この5号サイズのクラウン、華奢で美しいフォルムをしていますが、細身なだけにあまり頑丈ではありません。今回もアルミ・ダイキャストの引き手にヒビが入り、開閉不能になっておりました。ムシには何の異常もなかったので、メーカーに発送してスライダーを新品(担当は強化パーツと言っていました)に交換させ、お預かりから一週間程で納品いたしました。

*バズリクソンズ製品の修理についてお問い合わせいただくことが多いのですが、パーツ交換(ジッパー、リブ、スタッド等)を伴うメーカー対応修理につきましては、当店で販売した商品以外はお受けしておりません。お買い上げになった販売店にてご相談ください。当店に販売記録のある商品につきましてはメーカーへの発送、修理代の見積もり、納期管理等責任をもって承ります。
*パーツ交換の必要がない修理、カスタムワークは、都合のつく限り持ち込み品にもSHOP内で対応しております。
本日の修理品
持ち込みでチェーンステッチのご依頼です。
表側(上糸)をネイビーで、裏側(下糸)をオレンジでセットして、チェーンは虎縄のようにコンビの仕上げになります。どこかのデザイナーブランドのようですが、全く興味がないのでよくわかりません(本当のこと言ってすみません)。生地はポリウレタン混のもので、よくおばちゃんジーンズや、流行もののスリムフィットやブーツカットに使われる、伸び伸び系です。この手の生地は、裾線を裁断した時点で横に伸びてしまい、機械にかけて縫うときに引っ張りすぎるとさらに伸びてしまうので注意が必要です。
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ところで、今日から始まる国会に注目しています。
政治とカネの問題ももちろんですが、『日本は日本人だけのものではない』と言い放ったアホ首相のもと、民主党は在日外国人に地方参政権をくれてやろうとしています。こちらのほうが大問題で、国境の島を占領されかねない極めて危険な法律です。この成立をなんとか阻止してもらいたいものです。
ヒールラバー交換
外注に出したウエスタンブーツのヒール修理があまりにもみごとな出来映えだったのでご紹介いたしましょう。
今回お願いしたのは大府市のデラソウルさんです。
当店が販売するウエスタンブーツは大阪のFUNNYが輸入元になっており、しっかりした修理工場も持っています。レザーソールの全面張り替えなど高度な技術を必要とする仕事はすべてこちらにおまかせし、往復の送料と修理代の実費をお客様からいただいています。しかしヒールラバーの交換のみの場合は、修理代よりも送料の方が高くついてしまう上に時間がかかるので、近場で修理出来るところをご紹介しています。以前はウエスタンブーツのヒールに対応出来る1センチ厚のラバーを持っている修理屋さんは少なかったのですが、現在はほとんどの修理屋さんが扱うようになりました。
ただ、職人によって技術のレベルに大きな差があり、プロとしての誇りも責任感もないハンパ職人の手にかかると情けない仕上がりになってしまいます。昨年までよくお願いしていた修理屋さんも職人が変わったことで、スタック(ヒールの積み革部分)とラバーのつなぎ目がはっきりわかるような雑な仕事になり、底釘も浮き気味だったりして、がっかりさせられていたところです。
今回お願いしたデラソウルさんは初めてだったので、試しに自前のトニー・ラマをお願いしました。応対した職人さんは年若いおにいちゃんで、もっさりした感じだったので、大丈夫かいな?と思いましたが、仕上がりは見事なものです。交換したラバーの外回りは傾斜をつけて美しく削り込まれ、ラバーをスタックに留めるために打ち込まれた釘は、頭も見えないように処理されています。即日修理で、2000円でおつりがきました。この仕事内容ならむしろ安いぐらいです。
ビブラム社のソールも扱っているようなので、今度ワークブーツもお願いしてみようかと思います。
スタッズベルト製作中
当店では一昨年からオリジナルアイテムとして、スタッズベルトを製作しています。
帯はしっかりと腰のあるタンニンなめしのステアハイドを使用し、バックルも真鍮のキャスト製のもので、あえてクリア処理をしていません。一般に真鍮製のバックルは、鍍金を施すか、真鍮の上にクリア塗装を施します。これは真鍮が銅と亜鉛の合金であるために、銅と革のタンニンが反応して変色するのを防ぐためです。商品として店頭展開する上でも、変色しやすいのでは売りにくいという感覚もあったとおもいます。しかし、鈍く変色した無垢モノには独特の味わいがあり、ピカピカ、キラキラしたバックルよりも、日本人の感性にはピッタリくるのではないでしょうか?
スタッズも真鍮製で二本爪(ツープロング)と呼ばれるもので、こちらはスタンダード・リベット社のものを使っています。この二本爪の打ち込みには非常に手間がかかり、二の字に開けた穴に鋲を差し込み、裏のツメを折り込んで上からプレスします。国内では専用の工具が流通しておらず、ジグを金型屋さんにたのんでつくってもらいました。打ち込みのパターンはフローラルとアローヘッドの2種で展開しています。フローラルパターンの方は後ろ中心部分にスペースがあり、スタッズでイニシャルを入れることも出来ます(別途1000〜2000円)。
ただいま年末年始に販売して欠品したサイズを製作しております。
本日の修理品
強靭なブラウンダックのワークパンツの裾上げです。
ダック生地は太い糸で織られた平織り生地のことで、キャンバス、帆布(ハンプ)とほぼ同じ意味です。キャンバスはその名の通り、表面に白い顔料を塗って油絵を描くのに用いられますし、帆布はヨットの帆の素材として用いられたことからその名があります。
裾上げはオリジナルに準じてシングルミシンでおこないますが、ワークパンツの裾の巻き幅はやや太く、1,2センチくらいでとります。シームは両側とも3本針で巻き伏せられており、非常に曲げにくいので、プライヤーで挟んで処理します。お店によっては、シームの部分を木槌でバンバンたたいて折り込んでいるところもありますね。
このくらいの生地は工業用の地縫いミシンでならサクサク縫えます。
余談になりますが、ミシンの仕様を大雑把に分けると、工業用、職業用、家庭用ということになるとおもいます。
工業用は、単一機能で工場で一日中ぶっ通しで踏み続けて使うことを前提につくられていますから、頑丈なのは言うまでもありません。重い鋳物のボディで、モーターも大きなものが別体で取付けられます。
職業用は、手内職のプロの方達が使うポータブルタイプのミシンです。こちらは基本構造は工業用と変わりませんが、モーター内蔵型で、ボディはプラスチックを多用しているので、持ち運び可能です。耐久性は工業用には及びませんし、動力が弱いので厚物縫いも限度がありますが、故障も少なく、メンテナンスをちゃんとすれば20年以上は充分使えます。懇意にしているミシン屋さんによると、趣味で古布の縫い物をしているおばちゃんたちにも人気があり、中古の出物などがあるとすぐに売れていくそうです。
家庭用は、オモチャに毛が生えたようなもので、私は使い捨てミシンと呼んでいます。以前、作動しなくなったのを預かって修理しようとバラしたことがあるのですが、最も負荷のかかるギヤ周辺のパーツにプラスチックがコーティングしてあるのを見て、こりゃダメだと思いました。マンション等で使うことを考慮して、音が出ないように対策してあるのでしょうが、これでは抵抗の大きな生地など縫えるはずありません。内部パーツのプラスチックが経年劣化してひび割れたのが故障原因でしたが、そのパーツもメーカーの方では欠品しており、年数が経ち型替わりしているので対応出来ないとあっさり言われました。その時点でミシンではなく粗大ゴミになりました。よくTVショッピングなどで、使いもしない余分な機能満載で、『こんなに厚い生地の重ね縫いも楽楽〜♪』などとやっていますが、ウソつけ!と思いながら観ています。非力なモーターが焼き付きそうになっているんじゃないでしょうか?
宣伝に乗せられて買ったら後悔すること請け合いです。
本日の修理品
引き続きデニムの修理です。
現代的なジーンズは、内側の接ぎ目(インサイドシーム)を二本針巻き伏せという縫い代を巻き込むダブルステッチで処理するのが一般的ですが、ビンテージ(及びレプリカ)ジーンズでは地縫いした縫い代を片倒ししてコバステッチという仕様になります。そのため股ぐり部分では、ほつれや引っ張りに対する強度が劣るので、どうしてもパンクし易くなります。完全に裂けてしまう前の段階で手を加えてやりましょう。
裂け目の裏に当て布してかけつぎ→上から綿のテープで前後の身頃をつなぐとともに縫い代をカバー→完了
この修理は、名古屋市で婦人服を展開する◯ーノ・ピュ◯の店長氏からの依頼です。
東洋製品のファンでもあり当店のお客様としてもご愛顧いただいております。ご来店になるたび、昨今の業界事情や信用情報などを交換したりしています。
彼のお店は商業施設のインショップのために営業時間が長く、スタッフを集めてシフトを組むのに大変な苦労をしていたようですが、このところの不況で、人材募集をかけると希望者がどっと押し寄せるそうです。
平成大不況も人材を求める側には有利にはたらきますね。
B-15CとMA-1
今日は女性オーナーのご希望で、B-15C(モディファイド)のオリーブグリーンに当店で製作したパッチを縫い付けました。第8空軍の8にドラゴンが絡んでいる、ローカルメイドのパッチを元に製作しました。ちょっとなごみ系です。
ところで、B-15C(MOD)と、後継のMA-1(その間にB-15Dもありますが)の大きな違いは色(B-15C/オリーブまたはネイビー MA-1/セージグリーン)とジッパー等の付属関係ですが、縫製の仕様にも大きな違いがあります。両方をお持ちの方はおわかりでしょうが、着用感が全く違います。両方共に中綿にウールパイルが入りますが、B-15Cでは袖口と裾線をとじるとき、表地と裏地でリブで挟み込みますが、中綿は縫い込まずに浮いた状態(ふらし)で始末します。それに対してMA-1では中綿も同時に縫い込みます。これによって縫い代部分が張り出してガッチリしたフォルムになります。MA-1の方がしゃちこばった感じになるのはこのためです。この方が戦闘服らしいといえばらしいのですが、街着としてさらりと着るにはB-15系の方がなじみやすいかもしれません。このへんは好みが分かれるところですね。
本日の修理品
今週はデニム修理を集中的にやっております。
画像はヒップ周辺の生地が薄くなり、パンク寸前だったものを裏打ちしました。左右のヒップから股ぐりにかけては曲面なので、左右別々に当て布をします。今回は薄手のデニム生地を当て布に使いました。一般にジーンズの修理には接着芯地(シャツの衿の成型等に使われます)を用いますが、当店では小さな穴をふさぐ時以外はあまり使いません。接着芯地は、ガーゼのような生地に熱で溶ける樹脂をのせたもので、アイロンで圧着出来ます。お手軽ですが、デニムの表面に樹脂を浸透させることになるので、広範囲になると生地の風合いを損なってしまいます。大きな面積をカバーするときにはやはり当て布をして地の目(生地の方向)にそってたたいていく方が良いと思います。また、タタキもあまり細か過ぎると生地の縦糸を切ってしまうので、ある程度間隔をもたせています。

デニム製品のリペアについて、電話やメールで料金、納期等お問い合わせをいただくことがありますが、以下の点をあらかじめご了承ください。

*料金について
修理品の状態は千差万別ですので、正確な金額は店頭で見積もってみないとわかりません。目安としては、カケツギで裏打ちする場合は一カ所2500円以上になります。小さな穴でも生地が薄くなっている場合は、お客様の想像以上の範囲を裏打ちするケースが多いです。

*納期について
可能な限り迅速、丁寧を心がけておりますが、人手もスペースも限られた中で対応しておりますので、いつでもすぐに対応出来るわけではありません。また、たて込んでいる時期には、当然ながら自店で販売した商品を優先的に扱います。

*リペアをお受け出来ないケース
洗濯されていない製品の汚れ、ほこりは機械の故障原因となりますので、洗い上がりの状態以外はお受けしかねます。
本日の修理品
年末、年始にお預かりしたデニムの修理をせっせとやっているところですが、リブの補修依頼が入りましたのでご紹介します。
画像ではわかりにくいかもしれませんが、リブの中程に虫食いによるポチ穴が開いています。直径3ミリほどで、このくらいならば簡易修理で充分カバー出来ます。作業としては、粉末の樹脂を穴に落とし込み、熱を加えて溶かして固めてしまうというやりかたです。袖口を解体する必要も無いので、時間もかかりません。ニットパーツは小さな穴でもそのまま着用していると大きく広がってしまい、補修が難しくなります。以前にも書きましたが、リブの丸ごと交換は、中表にするために袖口だけではなく身頃までバラさなければならず、恐ろしく手間とお金がかかります。
穴が開いたら早く手を入れるにこしたことはないのです。

ところで日本には、高価な着物やジャケットの穴あきを補修する、専門職の人たちがいます。メーカー時代に、そのワザを目のあたりにしましたが驚くべきものでした。直径1センチほどの大きな穴を、その服の別の部分(縫い代や見返し端)から取った生地をほぐした繊維で、一本一本拡大鏡を見ながらピンセットでかけついでいくのです。仕上がりは完璧で、穴の痕跡すらありません。日本の職人技術の素晴らしさにすっかりヤラれました。
しかし、こういう人たちがヨーロッパのマエストロのように高く評価されないと技術は伝承されないでしょうね。現状では専門職は減っていく一方です。
キャスケット
キャスケットが昨年あたりからぽつぽつと売れています。
ハンチングに似ていますが横にふくらみを持たせたような形状になっています。当店ではニューヨークハット社のフェルト製のものを地味に展開しています(H.Pには載せていませんけどね)。春からはSUGAR CANEのキャスケットもラインナップに加わります。
キャスケットはなかなか使い勝手が良く、いろいろな服とコーデュネートできるアイテムです。
画像は2004年に当店でサンプル製作したデニム製のキャスケットです。商品化するつもりで気合いを入れて型紙から製作しましたが、日々、他の仕事に追いまくられて未だに現物化していません。
このときは、裾上げ等で大量に廃棄していたデニムの切れ端をなんとか利用出来ないかと考えたことと、懇意にしているミシン屋さんから横振りミシンの出物を紹介され、使う当てもないのに発作的に購入してしまい、それじゃ帽子でもつくろうかと考えたのです。
トップは8枚接ぎになっており、力織機で織られた高級デニム(切れ端ですけど)をぜいたくに使って、横振りミシンで接ぎ合わせております。腰裏と、ツバの芯地には本革を使用しました。フォルムも美しく、商材としては充分ですが、今期も作業時間がとれそうにありません。
ということで、こちらは話のネタとしてご紹介してみました。
早一週間
年が明けて、早一週間経ってしまいました。
私達物販業者はサラリーマンの方々のように年始にまったり過ごせる時間はありませんが、それにしても時間の経過が早く感じられます。一説によると、年を取るごとに時間経過に対する感覚が加速度的に早くなるそうです。10代より20代、20代より30代、30代より40代といったように…
はっと気づいたら老境にさしかかっているかもしれません。
ルーティンワークに埋もれること無く、日々感性を磨いていきたいものです。
昨日は東京から東洋エンタープライズの旧知の担当者二名が来店しました。
当店の取り扱いブランドの多くは、ここからリリースされます。旗艦ブランドのシュガーケーン、バズリクソンズ、サンサーフ、インディアン等はもちろん、今年はとくにロンウルフのブーツに力を入れていきます。海外ブランドの上を行く上質なつくりと履きやすさで、ブーツに一家言持つ人たちからも高い評価をいただいています。オーダーから仕上がりまで半年以上かかるのですが、出来るだけ現物販売出来るよう店頭のストックを充実させていきます。
さて、今日は昨年末にオーダーいただいた仕事にかかっています。イーストマン社のパッチをレザーでトリミングしてA-2に縫い付けます。
良書であるため、ご紹介
『昭和激流・四元義隆の生涯』金子淳一著 新潮社
本書は血盟団事件の首謀者であり、戦後政界の黒幕として絶大な影響力を誇った四元義隆氏の生涯を記したものです。
東大在学中に右翼のテロリストとして一人一殺を唱え、殺人罪で下獄、小菅刑務所で8年あまり服役した四元氏は、太平洋戦争直前に出所します。近衛首相を補佐し、陸軍の暴走に対抗しますが戦端はひらかれ、敗戦。日本再興のため文字通り身体を張って東奔西走する氏の生涯は、壮大なドラマそのものです。本書には氏と関わりのあった著名人がたくさん登場しますが、そうした人々の横顔、裏面も垣間みることが出来ます。
読了したあとに感じる爽やかさは、四元氏の徹底して無私な求道者としての姿勢、捨て石を覚悟した憂国の志によるのでしょう。
歴代総理の指南役、右翼の大立て者といわれる男の生涯は感動に満ちています。
ニットとカット・ソー
同じコットン素材のスウェットにも、大きく分けてニット(編み物)とカット・ソー(裁断・縫製物)があるのをご存知でしょうか?
ニットというとウール製品を想像しがちですが、素材とは関係なく、編み物一般を指します。一方カット&ソーは、編み地を型紙裁断(カット)し、縫製(ソーイング)することからこの呼び名があります。これは基本的に生地製品と同じ工程で生産されます。製品としては一見すると同じようですが、製造工程が大きく違い、商品特性も違います。簡単な判別法としては、ニットはボディの脇に接ぎ目がありません。これは丸胴といって、編み機でボディを筒状に編み立てていくのです(ただし袖やリブは裁断して縫い付け)。生産性の点ではカット・ソーにかないませんので、短サイクルで生産するレディース製品や比較的低価格の製品はカット・ソーが主流になります。
そしてニット製品には、現代の編み機で製品化したものと、半世紀前の吊り編み機(機械が柱に吊られた状態で固定されている)を再稼働させ、手編みに近い風合いにこだわったものがあります。画像のフェローズ製品は40〜60年代当時の吊り編み機でゆっくり編み上げられたものです。手編み感覚のざっくりした風合い・毛羽立ち・フィット感などは現代のものとはあきらかに違います。
生産性が低い(高コスト)のは力織機で織ったデニムと同様ですが、やはりこちらのほうが長い期間、気持ち良く着ていただけると思います。
バックとベリー
爬虫類素材として最高級とされる鰐革ですが、カットする部位によってかなり表情が違います。バックカット(背中をカットし、腹の部分を使用)では表面に凹凸が無く、鱗模様が揃って落ち着いた感じになります。ベリーカット(背ワニと呼ばれ、腹の部分を裂き、背中の突起部分を使用)ではゴツゴツした迫力のある製品に仕上がります。画像は希少なナイルクロコダイルをベリーカットで使用したFUNNYのウォレットです。背中の突起部分(クラウンといいます)を贅沢に使用するので、バックカットよりも割高ですが、迫力満点です。
クロコダイルはワシントン条約の規制対象ですので、個人で製品(または革材料)の輸入は出来ません。経済産業省に毎年申請をして輸入枠をもらい、その範囲で業者が輸入をしています。他にもニシキヘビやオーストリッチ(ダチョウ)も規制対象になっています。
新年早々のこの時期、小売業界ではお約束のように福袋を集客ネタにしています。このモノ剰りの時代に、多くの商品をつめこんだ袋詰めのセット商品が、どれだけ購買意欲をそそるのかわかりませんが、量販さんなどは12月初旬から準備作業しています。もはや売り上げ予定として予算が組まれ、年間スケジュールの一部になっています。実態としては余剰品をまとめ売りするのではなく、一部の余剰品とセール用に開発した商品の抱き合わせ販売といったところでしょうか。
実はアパレル業界には、セール品を専門に開発する業者さんがいます。そして度々問題になるのですが、その多くの商材が二重価格で販売されています。
二重価格というのは、正札10000円→セール価格5000円で販売されているものが、実際は10000円で販売された実績がなく、はなからセール価格5000円で販売されているようなケースをいいます。もともと5000円でも利益の出る製品であることは言うまでもありません。
これは一般消費者に誤解を生ぜしめる商法ですから、公取委の摘発対象にもなります。
しかし、常態化していて数が多過ぎ、事実上野放し状態なのです。
福袋に詰め込まれる商品も、おおくは福袋用に開発された商品ですから、もともと正札があるわけではありません。(50000円分の商品が福袋で10000円)などと謳われていても、そのまま鵜呑みにできるものではないのです。
だいたいまともなメーカーの商品を投げ売りしたりしたら、メーカーも黙ってはいないでしょう。自社の製品に誇りを持つメーカーはダンピングをほうってはおきません(じつはこれは価格制限で独禁法違反のおそれがあるんですけどね)。
福袋商法もひとつのビジネスモデルですし、全否定するつもりはありません。本当に良品を詰め合わせてお客様に楽しんでもらおうという姿勢のお店もあるとはおもいます。
結局はCS(顧客満足度)ということですから、とやかく言えませんが、供給する側にも様々な戦略があるのだということを書いてみました。
量販のみなさん、ごめんなさい。