店長日記

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シェリダン・カービング
最近のレザー製品のブームで、革ザイフや携帯ケースを自作する人がずいぶん多くなりました。中にはツールを一通り揃えて、カービングに挑戦する方もいらっしゃいます。カービングには様々な手法がありますが、ネイティブ系のイメージにぴったり合うのはシェリダンスタイルのカービングです。発祥がワイオミング州のシェリダンのためこの呼び名らしいのですが、大雑把に言うと、花柄を中心に茎や葉が規則的に渦を巻くパターンです。FUNNYのカービング製品はすべてこのスタイルですね。もちろん職人さんによって、ディテールにはかなりの違いが出ます。スタンプツールは鋼材を削って自作したものも多いのです。また、同じ人が同じ素材に彫る場合でもトレース無しのフリーハンドですから、全く同じものはありません。それも大きな魅力です。
私はカービングは本職ではありませんが、自分で使うものは出来るだけ自作するようにしています。画像は2,3年前に作ってSHOPで使っているトレーです。革は西尾市のクラフトマン・永谷氏のご提供です。質の良い革を使えば打刻面がはっきり出て、凹面のもどりもありません。時間が取れたら、大きなものも作ってみたいと思っています。
B-6 ネームプレート製作
週明けからは茨城県のお客様のオーダーで、B-6とA-1のネーム製作、縫い付けにかかっています。B-6はB−3と同じ羊革のフライトジャケットですが、毛足が少し刈り取られて短く、運動性が向上しています。比較的軽いので街着としても着易いアイテムです。
ネームの刻印は任意に決めていただくのですが、今回はB.RICKSONで製作いたしました。縫い付けの際は、モーターをオフにしたミシンで手送りで縫っていきます。ムートンへの縫い付けは、機械のセッティングに時間がかかります。実際に縫う時間よりもセットしてテンションを調整する時間の方がかかるぐらいです。革製品の縫製は、布製品のようにやり直しがききません。先端が菱になった針で繊維を切り開きながらザクザク縫っていくので、穴が開いた箇所は元に戻りません。何度も縫い直しなどしていたら、切り取り線のようになって革が切れてしまいます。一発勝負の世界なのです。
名著であるため、ご紹介
『大人たちの失敗』櫻井よしこ著 PHP文庫
私が心から尊敬する保守論壇の巨星、希代の女傑、櫻井よしこさんの著書です。
7〜8年前に刊行されたものの文庫版です。日本の教育、福祉、環境などの社会問題から始まって憲法、外交、国防問題まで素晴らしい見識で斬りまくります。このお方は、いっそ政治家に転身していただきたいぐらいですが、残念ながらご本人にそのつもりは無いようです。
当店をご利用いただいている自衛隊関係者の方々ならずとも、日本人なら誰でも思わずふんふんと頷いてしまうような内容です。
ご一読あれ。
エアフォースパッチ
今日はお客様のオーダーで、フライトジャケットの左上腕に縫い付けるウイングマークの刺繍にトリミングをつけています。このウイングマークのデザインは、最近Tシャツや、スウェットのプリントに多用されるようになりましたね。所ジョージさんの影響でしょうか?所さんといえば、昔深夜のラジオ番組でDJをしていたのを聴いていました。番組中にギターを弾いて歌ったりもしていましたが、あまりにもヘタクソすぎて、強く印象に残っています。テレビでブレイクするずっと前ですけど…
さて、この刺繍パッチ本体はデッドストックで、当店で長年にわたってちびちびと販売しているものです。製品染め(丸染め)されていて渋い色合いなので隠れた人気商品です。トリミングに使った革は、懇意にしているレザー作家の方から提供を受けています。赤茶色のタンニンなめしで、オイルを入れてやると、じわりと浸透していきます。
フライトジャケットは、もともとシンプルで特徴のないものですが、オーナーのセンスでワンポイント加えてやるだけで表情が出てきますね。
フライングスカル
今日は埼玉県のお客様からご注文頂いたフライングスカルのパッチを描いています。メールに当時の実物の画像を添付していただいたので、そのイメージにそって製作しています。中古風にというリクエストですので、少し色焼けした感じで仕上げます。ベースの革はタンニンなめしで、繊維の多いものを使ってみました。微妙に顔料を多く塗ったので、ひび割れ効果も期待出来ると思います。この後、無地のA-2のボディに縫い付けて完了です。
スタッズワーク
昨今のスタッズブームで、婦人服や、子供服の世界にまで浸透したスタッズですが、皆さまはどんなイメージをお持ちでしょうか?ちょっと古い世代の方はパンクロッカーを思い出す人が多いかもしれません。しかし元々は、馬具の飾り鋲として発展したもので、ウエスタンファッションの一アイテムなのです。古くは1900年頃の鞍やガンベルト、チャップスなどに装飾として用いられています。
今回は、バッカルー社のトートバッグのマチ部分に、フラワーパターンで打ち込んでいます。スタッズ自体も、手芸センターなどで販売している一本足のカシメ式ではなく、スタンダード社の真鍮製の二本爪スタッズ(HTCが使っているものと同じです)を一つ一つ手打ちしています。奥まったところに打ち込むのは大変ですが、以前当店のお客様さまからいただいたジグを使って作業を進めています。
このトートバッグは(記念日に)奥様へのプレゼント用にということですので、納期厳守で納めさせていただきます。
本日の修理品
本物のビンテージ、50年前のリーバイス501XX(ダブルエックス)です。遠く茨城県から修理依頼をいただきました。年代相応に全体にやれていますが、なんとか着用出来るレベルまで手を入れたいと思います。
20年位前、古着商だった頃、ジーンズは千本以上扱いましたが、XXモデルは既に別格扱いでした。それでも異常にバカ高くはなく、サイズ、コンディション共に良いもので、店頭で3万円位で販売していました。ちなみに赤耳(66)は5800円、レギュラーで4800円でした。しかしその後の古着バブルで状況が一変、アメリカ本土での価格が暴騰し、程度が落ち、サイズも揃わずで普通のビジネスにはならなくなりました。私は早々に見切りをつけ、アパレル時代のツテで、国内のレプリカもの中心に切り替えましたが、古着輸入にこだわった方々は大変だったと思います。なんといってもアメリカの古着ディーラーはユダヤ系(一部アラブの人もいましたけど)で、しっかりとカルテルをつくり、油断も隙も無く、強力なネゴシエーションが必要になります。日本人同士のように信義で通じる事はありません。『友愛』なんてバカなこと言ったりしたら徹底的にムシられるでしょうね。きっと。
絵文字のペインティング
フライトジャケットの左肩部分に筆記体で文字入れしました。白の顔料で描きますが、一度塗りでは下地の濃茶が出てしまうので、乾くのを待って3〜4回重ね塗りします。この顔料は足付きも良く、乾くと耐水性になります。11月中の仕上がり予定だったので、なんとか納期通りにいきました。
今日、店頭にバズのA-2をお持ちの方が、修理依頼でおこしになりました。ジッパーのテープのエンド部分が破損しており、結論から言うと修理をお断りしました。理由としては、当店での販売記録のない商品だった事、ジッパーを丸ごと交換する必要があり、メーカー対応になるケースだったということもあります。以前にも書きましたが、純正ジッパーのテープごと交換はメーカーの裁量で、非常に手間と時間がかかります。そして、お客様とメーカーの指定工場との間に立っての見積もりや納期管理、時には修理代の立て替えなども発生します。もちろん当店で販売した製品であれば(フライトジャケットに限りませんが)すべて対応しています。着用期間が短く、通常使用での故障であれば、補償交渉も可能です。しかしながら、他店の製品や中古流通品はその限りではありません。SHOPとして、一定のアフターサービスを維持する為にもどこかで線を引かせていただく必要があります。何卒ご理解ください。
ピンナップガール
フライトジャケットのバックペイントではピンナップガールを模写する事が多いのですが、やはり顔の描き込みには神経を使います。その他の部分は、こう言ってはなんですが、ある程度力を抜いても全体の雰囲気が出ていればそれほど問題にはなりません。しかし人間の顔は、ほんの僅かにバランスがくずれただけで違和感を感じてしまいます。当時モノの実物フライトジャケットのバックペイントにはきちんと描き込まれたものはほとんどありません。それはそれで独特の雰囲気がありますが、仕事としてお受けする以上、当時モノ風のブサイクなピンナップガールでは通りません。爪楊枝でまつげまで描き入れています。
それにしてもこの時期にはカスタムワークが集中してしまい、人手が無い為に対応が難しくなります。当店の時間的都合を言わせていただくと、春〜夏頃にご相談頂くと、あまりお待たせする事無く対応出来るのですが…
みなさまご検討くださいね。
フライングタイガース
フライトジャケットをお持ちの方にはおなじみの飛虎のモチーフ。お客様のご要望もあって、ちょっと明るい配色で描いてみました。実際このパッチはローカルメイドでさまざまなバリエーションが存在するようです。フライングタイガース(部隊)は第二次大戦が始まる前に、中国国民党の要請で対日戦争に参加した米空軍の義勇隊です。義勇隊といえば聞こえが良いですが、蒋介石のプロパガンダにのせられ(アコギなルーズベルトが裏で糸を引いていたのは言うまでもありません)、当事者でもないのに中国までやって来て、日本軍と戦った空の傭兵のようなヒトたちです。そのパッチは言わば敵性文化ですから、深く考えると微妙にムカつきますが、今は友好国なので許してやりましょう。
本日の修理品
FUNNYの携帯ケース(ナスカン式)はベルトループにカンをかませてブラブラ状態でお使い頂くのですが、ベルトに固定して使いたい場合は、後ろの革のループにベルトを通します。ところがこの革ループは38ミリベルト対応なので、今主流の45ミリベルトでは使えません。ということで45ミリベルトに対応すべく、ループ幅を拡げました。
今日からM-422(G-1の前身モデル)のペイント&パッチプロジェクトにかかっていますが、その合間の一仕事をご紹介しました。
大阪へ…
昨日は東洋エンタープライズの来年の盛夏ものの商談で、大阪に行ってきました。国内メーカーではこの時期に半年先の受注をうけ、生産を開始するのが普通です。生地からつくり込むようなメーカーの製品は、企画の段階からそれなりに時間をかけてものづくりします。
本町にある展示会場は、私が20年以上前に勤めたアパレルメーカーの目と鼻の先です。当時の同僚はもうあまり残っていないでしょうが、なつかしい社屋もまわりの風景も全く当時のままです。平成大不況のただなかでも船場には活気があり、エネルギーをもらったような気がします。
カットソー中心の商談はさくっとすませ、モパーフリークの担当とアメ車談義を交わして展示会場を後にし、FUNNY本社のある荒本に移動しました。FUNNYでは新規の商材として、レディース用のショートのウエスタンブーツを企画しています。メキシコのRANCHO社の生産で、本革ソールで2万円を切る価格設定です。メキシコからの輸入の場合は関税で優遇されており、この価格設定が可能との事でした。定番商品の欠品分をフォローし、帰りがけにTONY LAMAのフロアマットをいただきました(ありがとう!)。SHOPで長年使っていたラグマットが消耗しきっていたので、まさにグッドタイミングです。さっそく使わせて頂くことにしました。
昨日の修理品
バズリクソンズのB-15の袖下をかけつぎました。画像左のパックリ開いた穴が画像右のように塞がり、一見しただけではわからない程度に仕上がっていると思います。長年の使用にもかかわらず、リブには全く傷みがなかったので、これで通常使用には差し支えないと思います。
ところでバズのフライトジャケットの修理で、大仕事になるのはリブの丸ごと交換とジッパーのテープ交換です。どちらも身頃全体をバラさなければならず、大変な作業です。そして、製造元の東洋エンタープライズでは、開発した自社パーツ(丸編み段リブ、クラウン他数種のジッパー)の流出(→他社製品への流用)を避けるためパーツ販売はせず、正規代理店経由で返送されたものを指定工場に送り、修理に対応しています。当然といえば当然ですが、修理金額もケースバイケースになるので、一度修理伝票を付けて工場に送って見積もりを取らねばならず、非常に手間と時間がかかります。また、エンドユーザーからの直接の修理依頼には対応していないため、代理店に販売記録の無いバズの中古品を入手されたケースでは、事実上パーツ交換が困難になります。
本日の修理品
この時期、フライトジャケットの修理品がたくさん入庫します。これはバズリクソンズの初期ロットのB-15で、いわゆるM品番というヤツです。一昔前の製品ですので、このお客様とも長いおつきあいになります。ご購入頂いてすぐ、当店で製作したフライングタイガースのパッチや、CBI章、AAF章、ネームを縫い付けいたしました。長い年月を経て革パッチに表情が出て、独特のオーラを放っています。今回は袖リブの付け部分が派手にパンクしているので、これをなんとかしないといけません。本格的になおすとなると、袖口を解体してリブと袖裏をはずし、袖下をかけついだ後に付け直しをしますが、そのさいには身頃全体を中表にする必要があり、身頃の裾リブまで一旦はずさなければなりません。(このあたりは縫製の知識がある方でないとわかりにくいかもしれません)。とにかく、やたらめったら手間がかかります。
そこで工賃をおさえる為にも、バラし無しで、上から横振りミシンでかけつぐことにしました。修理跡は目立ちますが、それもまたジャケットと着用者にに個性を与える事になるでしょう。
ボールポイントの鎧
明るいブルーのライダースジャケットに、ニッケルのボールスタッズをぎっしりと打ち込みました。オーナーはハーレーを駆る女性ライダーです。パンキッシュなやり過ぎ感が素敵です。
本日の修理品
お客様のチャップスジーンズを加工してウエストサイズを拡げました。
チャップス(シャップス)とは、馬に乗るときにパンツの上から履くオーバーパンツのことですが、このチャップスジーンズは、ジーンズの前身頃がダブルになっているデザインで、デニム生地がインシームに挟み込まれ、アウトシームは5セントコンチョで留め付けられています。
身頃は普通のジーンズと同じ作りなので、サイドシームにマチを作り、ウエストサイズを拡げることが出来ます。通常は目立たぬように処理する為にマチにデニム地を用いますが、チャップスジーンズにはあえて本革を使ってデザインポイントにしてみました。マチの裏部分はデニム生地を袋状に縫い付けて処理してあります。ウエストサイズは4センチほどプラスになり、ライダーのお客様が真冬に地厚なシャツをINして着られるだけの余裕が出来ました。
本日の修理品
今回は、マスター私物のベロア×ゴアテックスのブーツです。
10年以上愛用していますが、ロープをかける一番上のフックが飛んでしまいました。ブーツのハトメやフックの打ち直しには専用のジグが必要なので通常メーカーの工場に依頼する事になります。しかしよく見ると、ハトメ穴自体が拡がっており、規格もののパーツで打ち直してもまた同じ亊になりそうです。それではということで銅無垢の打ち抜きリベットを流用してセルフ修理してみました。馬の鞍を製作する職人が使うパーツで、台座の径も大きいのでガッチリ安定します。作業に先立って中性洗剤でブーツを丸洗いしてリフレッシュしました。(実はレザー製品の多くは、後処理をきちんとすれば水洗いする事が可能です。私はウエスタンブーツも時々丸洗いしています)。さて用意したリベットをアンビルとタガネ、ハンマーを使ってしっかりと打ち込み、スタッドの部分をL字に曲げてロープがかかるようにし、リューターで削って成形しました。
このブーツは今年の冬も活躍してくれそうです。
バックペイント
今から10数年前に、BUZZのB-10をお買い上げ頂いて、そのまま当店でバックペイントさせて頂いたものを、お客様が時々着ていらっしゃいます。40年代くらいのヌードのピンナップガールを模写したのだと思います。コットン生地のB-10は今ほどメジャーでなく、ペイントされたものを着ている人などほとんどいなかったのではないでしょうか?絵柄も絵柄だし、ずいぶん注目を集めたようです。経年変化でひび割れが目立ちますが、ジャケット全体のヤレ具合と共に絶妙な雰囲気をかもしだしています。
中国製アメリカブランド
当店で扱う商材は、約1割がアメリカからのインポート品になります。そしてアメリカブランドの多くには、MADE IN CHINAのアイテムがあります。たとえばトニーラマやジャスティンといったアメリカを代表するブーツメーカーのレザーベルトは、今や100%中国製です。実はこれが、皮肉な事に以前アメリカ本土で生産されていた頃よりも品質が向上し、人件費の安さから手の込んだ製品でもお手頃価格なのです。いずれウエスタンブーツの生産も、中国にシフトしていくのでしょう。アメリカはとっくにモノ作りの出来ない国になり、生産現場は崩壊しかかっています。もちろん経済合理性を追求したアメリカ人自身の選択でそうなったわけですが…。
一方で日本のメーカーも、原材料や、コストのかかる加工部分を中国に依存しています。あまり知られていませんが、製品の生産国表示は、最終工程を仕上げて検品をおこなった国のものが付きます。ほとんどの工程を中国で生産し、未完成の状態で輸入し、最後にミシンを入れて検品したMADE IN JAPANの製品もたくさんあります。一般の方が思っている以上に、アパレルメーカーは中国への依存度が高いのです。
かつてアパレルメーカーに籍を置いた私としては、日本のモノ作りの現場が、アメリカのようになってしまわないよう願うばかりです。
本日の修理品
他社さんの製品ですが、裾の上げ直しのご依頼です。既に一度裾上げがされていますが、三つ折りの巻き幅が1,5センチほどもあり(太すぎ!)、糸も、ドレスシャツを縫うときに使うような細いフィラメント糸で、あまりに悲しすぎるので、なんとかしてくれとのご依頼です。
了解いたしました!ついでに長さも少し足りないとのことなので、巻き幅を細くした分、可能な限り丈出しいたしましょう。

糸切りで裾線を解体(画像)→プレス→20番糸で幅8ミリに三巻き→裾線にアタリ付け→完了

結果的に8ミリほど長く仕上げる事も出来、ご納得頂ける仕上がりになりました。