名著であるため、ご紹介

名著であるため、ご紹介
『なぜ宇宙人は地球に来ない?』松尾貴史著 PHP新書

この多芸多才な関西人は、そこいらのハンパ芸人の域を超えた異能を感じさせる。
オカルト懐疑派としても積極的に発言しており、なんとなく勝手にシンパシーを抱いているので、言動にも注目している。
本書はモノ・マガジンに連載した「超常俗物図鑑」を加筆、修正したもので、世にはびこる超常現象や占いをネタにした霊感商法から、疑似科学を利用した企業の商品売り込みまで、持ち前の懐疑精神で厳しく、かつ楽しそうに批判を加えている。おなじみの低劣なインチキ霊感詐欺師や自称Dr風水詐欺師だけではなく、大手家電メーカーまでもが御用学者を使って箔付けして売りまくった「マイナスイオン云々」などの商品は、極めて根拠が薄弱で詐欺的であると断じている。TV業界に身を置いていながら、スポンサードする有力企業にも全く気を使っておらず、自由に発言している。
この人は元来、世の不思議に対する興味が尽きないのだろう。その上で、常識を失わず、思考停止にならず、客観的に物事を観察して発言する姿勢を維持しているのだ。
一方で、まともな社会生活を踏み外さないかぎりはオカルティズムにも寛容である。「イワシの頭も信心から」ということで、小馬鹿にしつつもけして追い込んだりはしない。
その点、「科学的にありえなければありえない」の立場でオカルト信者に対してかなり攻撃的、啓蒙的な大槻義彦氏とは若干スタンスが異なると思う。