ニューヨーク、狼たちの野望

ニューヨーク、狼たちの野望
この映画にこの邦題はないだろうというのが観終わった後の率直な感想。
しかし作品自体は小粒ながら素晴らしい。内容もよくわからずに借りてきたが、たまにこうした当たりを引くことがある。
ニューヨークのスタテン島を舞台に、3人の男の人生が交錯する。聾唖で肉屋の店員をしている老人(シーモア・カッセル)、清掃作業員として働きながら強盗を企てる新婚の男(イーサン・ホーク)、殺害した死体を毎回袋に詰めて肉屋に持ち込み、処分を強要するマフィアのボス(ヴィンセント・ドノフリオ)。
肉屋の店頭で偶然3人が居合わせるシーンから、並行してそれぞれの人生を描き、意外なかたち収束に向かう関系を描いている。最近この群像劇のようなスタイルの映画がずいぶん多くなったように思う。同じイーサン・ホークが出演した近作の「クロッシング」も同じ手法である。
イーサン・ホークやヴィンセント・ドノフリオの達者な演技もさることながら、やはり印象に残るのは独特の哀感があり、どことなくチャーミングなシーモア・カッセル爺だろう。この役を他の俳優が演じていたら、映画の印象自体が違うものになっていたのじゃないだろうか。
派手さは無いが、よく練られた脚本で、シリアスドラマにブラックユーモアの要素を加えたような絶妙な作品に仕上がっている。