名著であるため、ご紹介

名著であるため、ご紹介
『ファクトフルネス』ハンス・ロスリング オーラ・ロスリング アンナ・ロスリング・ロンランド共著 日経BP社

ハンス・ロスリングは医師であり、世界保健機構やユニセフのアドバイザーであり、教育者としても著名である。
本書では、教育や医療、環境問題、人口問題などの「ファクト」を、実際の数字をもって解き明かしていく。
この本をざっとと読み通せば、自分も含め、いかに多くの人々が、誤った思い込みで物事を捉えがちなのかが良くわかる。
例えば思い込みの一例として、「世界人口は爆発的に増え続ける」がある。
人口爆発で、世界中の食糧が足らなくなるといった悲観論である。
ところが、経験豊富な人口学の専門家は、世界人口の増加スピードはすでに減速局面に入っており、予測では2100年の子供の数は現在と変わらず、20億人に過ぎない。しばらくは大人の人口が増えるので、全体として人口は増えるが、自然と調和する形で落ち着いていくというのが定説である。
商業主義のメディアが、不必要に不安を煽る姿勢も、この本では厳しく批判されている。
誤った思い込みは、主に人間の本能に根差すもので、自己防衛や恐怖心といった感情が基になっている。それは生きるために人間に備わったものではあるものの、理性をもってありのままに事実を見る姿勢が必要だと説く。
人々が目の前にある「ファクト」や人類の未来を、間違って解釈することの危険性を著者は指摘するのだ。
ページ数は多いが、人々の思い込みをQ&A形式で指摘するなど工夫され、読みやすい本。