名著であるため、ご紹介

名著であるため、ご紹介
『頭山満伝』井川聡著 潮書房光人社

玄洋社・頭山満の名は、戦前の右翼・軍国主義者の大立者としてマイナスイメージで取り上げられることがほとんどである。
しかし、これもまた戦後マスコミによる印象操作であると、本書を読み終えてつくづく思う。
著者は毎日新聞の記者であり、その緻密な取材力で、終戦直前に亡くなった頭山満の遺族、弟子、わずかでも関わりのあった人々を徹底的に取材し、その実像をあきらかにする。
また、歴史的事実を掘り起こし、その時々に頭山とその一統が果たした役割を、バイアスのかかっていない目で検証する。
ロシアや西欧の覇権主義に徹底して抗い、アジアの真の独立を目指した玄洋社社員は、数多が大陸で命を落としている。著者は、これらほとんど歴史の影に埋もれてしまった名も無き人々にも光を当て、尊敬を込めて記す。600ページを超える大作だが、ページを繰るたびに誇るべき日本人のエピソードに心動かされる。
終生無冠でありながら、政界に絶大な影響力を持ち、身体を張って信念を貫いた大東亜の巨星・頭山満の生き方は、現代の日本人の価値観とはかけ離れている。
つまりはそれが、敗戦後の日本人が変質し、無くしてしまったものということだろうか。