ガルシアの首

ガルシアの首
最近70年代の映画をあらためて観直すことが多い。
映画を観始めた頃の作品は、やはり意識の底にキッチリ刻印され、ファッションにしろ、音楽にしろ、車にしろ、その後の自分の嗜好に少なからず影響をあたえているのだとつくづく思う。
サム・ペキンパー監督はスローモーションでの暴力描写で一世を風靡した監督で、他にも『ワイルドバンチ』や『ゲッタウェイ』、『ビリー・ザ・キッド』などの傑作を世に送り出している。
主演のウォーレン・オーツはスター俳優のような華のない、地味なオジさんだが、演技は確かである。メキシコを舞台にした現代劇だが、ほとんど西部劇のようなテイストの作品だ。
メキシコの大地主が、自分の娘を孕ませたガルシアという男の首に賞金をかける。生き死には問わない。ガルシアがすでに事故で死んでいることをたまたま知った酒場のピアノ弾き(オーツ)は愛人とともにガルシアの墓をあばき、首を持ち帰って大金を手に入れようと画策する。ボロボロの62年式インパラのコンバーチブルで墓破りの旅に出るが、その過程で邪魔が入り、愛人は命を落とす。命懸けでガルシアの首は手に入れたものの、自責の念にかられ、人生の目的を無くしたピアノ弾きは、すべてを清算するために拳銃一丁で大地主のもとに乗り込んでいく。
人の命など紙のように軽い、埃だらけの荒れ地が続くメキシコを舞台にした救いのない物語り。
サム・ペキンパーの描く男の哀愁は見事である。
しかし、この映画は女性には全く評価されないにちがいない。女性の視点から共感出来るところはほとんど無いと思われる。この映画を観てふんふんと頷くような女性は、よほど人生の悲哀に通じているか、オツムが足りないかのどちらかであろう。
ちょい役で、ペキンパー映画の常連であるカントリーシンガーのクリス・クリストファーソンも出演している。この人の作った「ミー&ボビーマギー」は私の最も好きなカントリーソングである。それから冒頭の酒場のシーンで、ゴッドファーザー3作を通じて用心棒アル・ネリを演じたリチャード・ブライトが一瞬だけ(2秒くらい)出演していたのを見逃さなかった。クレジットもされておらず、ほとんどエキストラだったが…。